「自由民主」に区議除名、小池新党に劇場を提供
空回りした対立回避策
東京都議選の前哨戦として注目された5日の千代田区長選は、自民党推薦候補の与謝野信氏が小池百合子都知事らが応援する現職・石川雅己区長に惨敗した。得票は3倍以上の大差。都議会のドンと言われた自民党の内田茂都議(千代田区)は不出馬を表明した。
自民党の機関紙「自由民主」1月17・24日号の東京都版に同党東京都連の年頭ページがあり、高木啓都連幹事長は、「昨年は小池都知事の誕生により、都政は新しい時代に入りました。知事が唱える『都民ファースト』と、わが党が日頃表明している『都民の与党』とは、その意味するところに大きな違いはありません」と述べ、対立回避の構えだ。
ただ、同じページに東京都知事選で小池氏を支持した「7区議除名の経緯」が載るが、この処分が千代田区長選惨敗に尾を引いていることは否めない。
ちなみに7区議とは豊島区議の河原弘明、星京子、細川正博、本橋弘隆、里中郁男、練馬区議の村松一希、尾島紘平の各氏で昨年12月6日に除名された。豊島区の5区議は同13日には小池新党に向けた「都民ファーストの会豊島区議団」を結成したから、除名による注目を計算したとも見える。その上、翌14日に都議会公明党が自民党との連携を解消し、マスコミの関心に相乗効果をもたらした。
その渦中の同日、自民党都連は会合を開き、下村博文都連会長(衆院議員)が同紙に載る「除名の経緯」を説明。すでに多く報じられたことだが、昨年9月16日に「離党勧告処分」を出してからの紆余(うよ)曲折だ。
離党届の期限10月30日、「当事者の話を一度聞く必要があると判断し、処分の執行を猶予」。11月28日に「7区議の代表者2人と面談」。2人が「自民党に残りたい」と明言したので、「12月5日までに7人から身上書の提出を求め」た。
同5日に7区議の代表者から「身上書」の提出はしないと電話があり、同6日に都連で協議し、「残念であるが都連党紀委員会の決定通りの処分とせざるを得ないものとの結論にいた」った―というものだ。
しかし、有権者にはコップの中の論理で、党に従わず出馬した小池都知事や小池氏を支持した都議・若狭勝氏が衆院補欠選挙に当選し、不問に付されている違いが理解できない。結局、区議除名は「都民ファーストの会」に劇場効果を提供し、今年に入り都議選公認の発表に勢いがついている。
1月23日、第1次公認に両角謙(八王子市)、上田令子(江戸川区)、音喜多駿(北区)の各氏ら元みんなの党の都議3人と自民除名の本橋豊島区議。2月6日、第2次公認に増子博樹(文京区)、伊藤悠(目黒区)の元民主党の元都議2氏、自民除名の練馬区議2人。14日、第3次公認に台東区議の保坂真弘、足立区議の馬場信男、小平市議の佐野郁男、東大和市議の関野杜成の各氏を発表した。
小池新党は都議会過半数64議席を目指すと報じられている。都議会自民党は8年前の民主党を相手にして以来の苦戦の可能性がある。
解説室長 窪田 伸雄