共産党の「野党連合政権」 自力より民共共闘に活路

党大会で初の他野党出席

 衣の下の鎧(よろい)を共産党は気にしなくなった。衆院選に向け、選挙協力を交渉材料に共産党の連立政権入りを他の野党に認めさせる運動にかかることを第27回党大会(15日~18日)で決めた。これは安保法制反対のような反対のための野党共闘とは異なる。共産党の政権入りが最大の選挙争点となる可能性があるからだ。

共産党の「野党連合政権」 自力より民共共闘に活路

第27回共産党大会で手を取り、「がんばろう」の声を上げる(壇上右から)社民党の吉田忠智党首、自由党の小沢一郎代表、志位和夫委員長、民進党の安住淳代表代行ら=15日午後、静岡県熱海市

 他野党から初の党大会出席者となった自由党・小沢一郎代表、社民党・吉田忠智党首、民進党・安住淳代表代行らは、共産党の「本気」を本気にしないので出席したのだろう。が、共産党は「野党連合政権」を大会決議「第1章」にもってきて、「本気の共闘」をしようと言っている。昨年、参院選でただで借りた共産票は“開店セールの無料キャンペーン”だ。いずれ高くつくだろう。

 大会初日に、志位和夫委員長が大会決議案に対する党内討議を踏まえた中央委員会報告を行い、その全文が機関紙「しんぶん赤旗」(1・17)に掲載された。「第1章」は「決議案全体の『総論』というべき章」と説明し、昨年9月に提唱した「国民連合政府」を「幅をもった呼びかけ」にして安倍政権打倒後に共産党と政権を共にするかどうかの「問いに対する答え」(政権問題)を求めやすくするため、「野党連合政権」に言い換えたという。

 また、「わが党は、政権の問題で、野党間に合意が存在しないもとで、この問題での合意を総選挙の選挙協力の協議に入る条件とはしない」と述べ、まずは協議に応じる姿勢だ。選挙協力の協議を通じて共産党と政権を共にする合意をすると、「本気の共闘」にレベルが上がる。自前の選挙として取り組むだろう。そのような候補者を増やし、その当選者が所属政党の過半数を握れば共産党との連立容認に方針を変え得る。

 ターゲットは民進党だ。民進党に対し「応援団」の連合・神津里季生会長は、「文藝春秋」1月号で「民進党は共産党と手を握るな」とクギを刺した。蓮舫代表は共産党大会出席を見送ったが、それでも参院選の票の効き目は安住氏の出席に表れている。

共産党の「野党連合政権」 自力より民共共闘に活路

 一方、同報告で党勢は党員約30万人、「赤旗」読者が日刊紙・日曜版合わせて約113万人と報告された。3年前の党大会から党員はほぼ同じ、読者は11万1千人減った。1973年6月発行の「赤旗戦略」(講談社)は当時の共産党からの情報を基に機関紙部数を、「日刊紙五十万部、日曜版約百九十五万部」「日曜版一部について、選挙における共産党得票数は三倍」と記す。幹部は「三百万達成をめざ」すと豪語。この自力の機関紙拡大が長らく共産党の“勝利の方程式”だった。

 が、民共共闘を実現した昨年参院選は日曜版1部について得票数6倍で、自力の運動より民共共闘に効果が出た。「“勝利の方程式が見えてきた” 野党と市民と“二人三脚”」―同紙1日付新春対談見出しは方程式の変更を告げた。党大会決議はその意を表し、「野党連合政権」で議会制民主主義制度に二段階革命を応用する一歩を進めるだろう。