衆院補選初の「自」「民」対決 選挙に見境ない野党共闘

民進はLGBT票を狙う

衆院補選初の「自」「民」対決 選挙に見境ない野党共闘

衆院東京10区の補欠選挙で、応援の街頭演説をする小池百合子東京都知事(前列左端)、安倍晋三首相(右から2人目)、公明党の山口那津男代表(右端)=16日午後、東京・JR池袋駅前

 民主党が民進党になって、また蓮舫代表を選出して初の衆院選となる23日投開票の東京10区と福岡6区の補欠選挙。目下、最後の舌戦が展開されている。

 自民党の機関紙「自由民主」は公認候補のいる東京10区一本だ。福岡6区は同党系候補2人が無所属で立候補した。同紙10月18日号1面「衆院東京10区補選始まる」「わかさ勝候補の勝利に全力」の見出しで、告示日第一声を扱った。

 続く同紙10月25日号1面も「安倍総裁が応援演説/わかさ候補への支援訴え」の見出しで16日の同候補と安倍首相の演説の記事。ここで両号とも写真に写る小池百合子東京都知事の応援に記事で触れないのは現場との乖離(かいり)を感じる。小池知事の票がカギになる選挙区だが、小池氏を支持した区議らには離党勧告処分を下した都知事選分裂が尾を引いているためだろうか。

 公明党の機関紙「公明新聞」(ネット版)は12日付で「東京10区では、東京都豊島区で行われた自民党公認のわかさ勝候補(公明党推薦)の第一声に公明党の井上義久幹事長が駆け付け、必勝を呼び掛けた」と伝え、17日付で「山口那津男代表は16日、……、安倍晋三首相と共に絶大な支援を呼び掛けた」と報じ、さらに「街頭演説会には、小池百合子東京都知事も応援に駆け付けた」と加えた。

 民進党は東京10区、福岡6区とも公認候補を出し、機関紙「民進プレス」10月7日号最終面で「衆院補選勝利へ向け、両候補が蓮舫代表とともに訴える」の記事。10月21日号では1面で「激戦の衆院補欠選挙/野党は民進党候補に一本化」の見出しで両候補の訴えを載せている。ただ、見出しで「野党は民進候補に一本化」と書くが、共産党など他野党について記事では触れていない。

 目を引くのは東京10区「鈴木ようすけ候補」が「LGBTへの理解が広がらない現状を是正していく考えも表明した」と記述し、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)票の上乗せを狙っていることだ。

 民進党の公認候補2人を連日のように応援報道しているのが共産党機関紙「しんぶん赤旗」だ。日刊でページ数も多いので民進党以上に予算を費やしていると言える。

 共産党はかつて他党全てを批判する独自の選挙をしてきた。しかし、昨年の安保法制騒動以来、共闘のためなら他党をなりふりかまわず応援し、「赤旗」に民進党公認候補の応援記事が載るようになった。与党を負かすため見境のない運動に拍車を掛けている。片や小池知事や公明党の応援に触れない「自由民主」が相対的に独自的に見える。

 16日投票の新潟県知事選挙結果では案の定、「赤旗」が17日付1面全面を使い「新潟知事選 統一候補・米山氏が勝利/自公破る/市民と野党の共闘実る」と報じた(民進党は自主投票で「民進プレス」21日号では触れていない)。うっかりすると、近いと噂(うわさ)される衆院解散総選挙で与党は思わぬ苦戦を強いられかねない。

解説室長 窪田 伸雄