「公明」が観光立国特集 国・地方の成長に期待
アジア客に通訳不足指摘
訪日外国人が増えている。安倍晋三首相は「観光は、我が国の成長戦略の大きな柱の一つであります。そして地方創生への切り札であります。GDP600兆円に向けた成長エンジンでもあります」と、3月末の「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」で語り、政府は「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定した。
国の成長を促し地方を活性化する重要な位置付けであり、連立与党の公明党の機関紙「公明」10月号は「観光立国の加速戦略」と題する巻頭特集を組んだ。掲載された論文は、①東洋大学教授・古屋秀樹氏の「外国人客の満足度を高めリピーター増やす努力を」、②亜細亜大学教授・安田彰氏の「アジアの観光客をさらに呼び込むために通訳案内士の質と量の確保を」、③国際医療福祉大学大学院教授・水巻中正氏の「日本式医療ツーリズムの試金石/外国人医師の雇用特区創設など規制緩和が必要」、④東洋大学教授・島川崇氏の「遺構の教訓と物語を生かし地域を盛り上げる」、⑤大阪市立大学教授・柏木宏氏の「米国バークレーの事例に学ぶ/市街地活性化と観光振興が生み出す相乗効果」――の五つ。
①は政府の「観光ビジョン」の目標、2020年に訪日外国人旅行者数4000万人、消費額8兆円、30年に6000万人、15兆円、これを実現するための三つの視点(観光資源の魅力・観光産業の革新・快適な観光環境)に触れ、訪日行動データから検討を加えた。
「地域経済の起爆剤」にするために、「国籍・地域によって、観光資源に対する志向が異なったり、日本へのアクセシビリティが変化することによって、日本各地への訪問パターンに大きな影響を与える」ことなどを踏まえた上で、地方への誘客を実現する必要を訴えた。
②は訪日外国人にとって必要に迫られる問題だ。「訪日客約2000万人の83%」を中国、韓国、台湾、東南アジアなどアジア客が占めるのに「通訳案内士は68%が英語専門であり、需要が急速に伸びる中国語は12%、韓国語は5%……急増するタイ語やベトナム語はごくわずか」で、この状況から一部に悪質なガイドが横行し、「旅行の質の低下や日本のイメージダウンをもたらしている悪影響は見逃せない」という。
しかし、通訳案内士のほとんどは職業として成り立っていないとも指摘し、「就業機会を創出しようと活動しているNPO法人」が「関連会社True Japan Tours(株)」をつくり、「昨年は2000回を超えるガイド派遣を行った」ことに注目している。成長しているアジア圏の言語の通訳が増えれば訪日客はさらに増えるだろう。
③は観光以外の需要創出として注目される。医療ツーリズムに日本は後れを取っているが、2020年の国内市場を5500億円規模、経済波及効果を2800億円と見積もっている。他に東日本大震災津波被害を伝える「たろう観光ホテル」の遺構を取り上げた④、地方の取り組みを促した⑤など参考になる。
日本に親しむ外国人が増えることを期待したい。
解説室長 窪田 伸雄





