「自由民主」参院選勝利 アベノミクス信任を強調
「低迷に逆戻り」が説得力
与野党の勝敗を決する「自公対民共」の戦いとして注目された参院選(7月10日投開票)だが、4党の機関紙を見ると、いずれも「勝利」をアピールしている。その真贋を見分けるまでもなく、勝利を口にする資格があるのは改選議席数を上回った党である。
与党の自民、公明は改選議席を上回り、過半数も制した。自民党機関紙「自由民主」(7・19)は「参院選 わが党が勝利」、公明新聞(ネット版7・11)は「参院選 公明、過去最高14議席」との見出しで勝利宣言した。
「自由民主」は、「『アベノミクスを前に進めるのか。あの暗い低迷した時代に逆戻りするのか。それを決める選挙だ』――。各地での街頭演説で安倍総裁は政権交代後、経済最優先で取り組んだ結果、雇用が110万人増えたことや、有効求人倍率が史上初めて47すべての都道府県で1倍を超えたことなど、アベノミクスの実績を強調」、「民進、共産など野党4党は候補を一本化して選挙戦を展開したが、政策なき野合に毅然とした態度で臨むわが党を前に伸び悩み、政権批判の受け皿としての機能を果たせなかった」と書いている。勝因は、政権与党が示した経済政策の実績、「野合」という野党共闘の政策矛盾、これを強い姿勢で訴えたからという見方だ。
与党は、自民50、公明9の改選59議席から14議席後退しても非改選議席と合わせて参院過半数は維持できた。このような“余裕”の中で政権の信任を問う参院選では、有権者のバランス感覚が働き、政権批判票が増えやすい。
第1次安倍内閣で行われた2007年、菅内閣で行われた10年とも政権与党は敗北、長らく衆参ねじれ現象を招いた。13年の前回参院選は12年末の衆院選での政権奪還の勢いある追い風が第2次安倍政権に吹き続いていたが、政権4年目を迎えた今回の参院選では同政権の苦戦も予想された。
特に今年に入って株価下落など経済不振の中で、安倍晋三首相が5月の伊勢志摩サミット直後に消費増税延期を発表。「アベノミクス失敗」の批判口実を与えながらも首相は、この決断に信を問う意味を込めて参院改選議席の過半数(61議席)という勝敗ラインを設定した。1人区で野党統一候補を擁立する新しい動きの中でハードルは高かったと言えよう。
しかし、ふたを開けてみると自民56、公明14の計70議席は、前回の計76議席には及ばないものの大勝である。結果として首相は「アベノミクス加速への信認」(同紙見出し)を得ることができた。
アベノミクスの加速を訴えなければならないのは「失速」していたからだが、これからの「加速」に支持をつなぎ得たのは、共産党を加えた野党共闘陣営による政策推進力に有権者多数が疑問符を付け、そのような準備不足の状態では民主党中心の連立政権時代の「暗い低迷した時代に逆戻りする」という与党の主張に共感したからだ。首相の遊説に説得力を持たせたのは野党共闘の姿そのものだと言えよう。
解説室長 窪田 伸雄











