「自由民主」の参院選、「経済」の加速を強調

訴求力に“危機感”が必要

「自由民主」の参院選、「経済」の加速を強調

街頭演説する安倍晋三首相(右)=3日午後、福島県郡山市のJR郡山駅前

 参院選を目前に各党のメディアは選挙一色である。野党側は共産党機関紙「しんぶん赤旗」が半ば野党統一候補の宣伝紙となって安倍政権に激しい批判を繰り返しているのと比較すると、自民党機関紙「自由民主」がおとなしく見える。「自由民主」も「民共では危ない」ぐらいの反撃はしてもいいかもしれない。

 実際、衆院選でも共産党は小選挙区で野党共闘を進めるつもりであると公言しており、今度の参院選1人区で自民が前回より後退すれば野党共闘に勢いが増し、次期衆院選の政権選択に「民共」が浮上する蓋然(がいぜん)性は高まる。自公か民共かは既に選挙争点だ。

 「自由民主」6月7日号は骨太の方針、一億総活躍プランを報告。6月14日号1面は「参院選勝利を目指し全国一斉街頭/青年部・青年局全国約130カ所で街頭演説」(見出し)の記事。「『北朝鮮による拉致問題の解決』に加え、平和安全法制の必要性」などを演説したという。

 21・28日号は「安倍総裁、参院選に向け全国遊説」(見出し)でアベノミクスによる「経済の好循環」加速を訴えるもの。また、「政策なき野合に毅然と臨む」の訴えを中見出しに取り、他のページでは参院選公約を特集した。自民党は公明党とともに選挙の焦点を「経済」に据えており、同紙21・28日号でも「アベノミクスはまだ道半ば」として、「エンジンを最大限にふかしていく」と安倍晋三首相の演説を載せた。

 アベノミクス、安保関連法(平和安全法)など現状政策を説明し、推進することに支持を訴えるものだが、政権発足から4年目となると、どうしても新味があり訴求力が高いとは言えなくなる。政治に100点満点はないため、野党側の批判材料は増えてくる。

 自民党も4年前は野党として民主党政権の「公約破綻」を捉えて批判材料とし、機関紙上でも政権攻撃に熱を入れていた。2012年11月に衆院が解散されると、「自由民主」(同年11月27日号)は「衆院解散 日本を取り戻す」と大きな見出しを掲げた。当時の民主党が政権内抗争で迷走しただけに、中国の海洋進出など周辺情勢の緊張も相俟(あいま)って危機感を共有した有権者が投票した結果が、自民・公明の政権復帰に繋(つな)がったといえる。

 今度は野党が護憲反戦のアプローチで危機感を訴えている。安保法を「戦争法」と呼び、集団的自衛権一部容認や憲法改正に対して「立憲主義」破壊を訴えて、参院選では統一候補という野党共闘の形にした。

 殆(ほとん)どの参院地方選挙区が事実上小選挙区の定数1となり、自民か野党統一候補かの争いになる以上、政権選択の衆院選前哨戦の性格を帯びる。与党の機関紙上でも、民進、共産、社民、生活の統一候補に日本を任せることができるのか否か、「政策なき野合」の中身に踏み込んだ論戦を高める必要がある。

解説室長 窪田 伸雄