民進党の左傾化、共産・市民連合に迎合

「反安保法の一点」以外も

 政党紙において近ごろの民進党の動きは、「民進プレス」よりも共産党機関紙「しんぶん赤旗」を読む方が早く知ることができる。「赤旗」が日刊だからという理由だけではなく、物事が共産党サイドで決まっていくということである。

 民主、共産、社民、生活の野党4党と安保関連法廃止を求める「市民連合」(昨年、同法に反対した「総がかり実行委員会」のデモに参加した団体の代表らが結成)とが政策協定を7日に締結した。

 が、ネット版の「産経ニュース」(6月10日)によると、これに民進党の前原誠司氏(元民主党代表)は9日に出演したテレビ番組で「知らない。党の決定ではない」と発言したところ、民進党の岡田克也代表が10日、「合意は選挙公約の線の中に入っている」と反論したという。

 前原氏は蚊帳の外だったということか。「赤旗」8日付は2~3面で「市民と野党本気の結束」との大見出しで市民連合と4野党との合意を詳報した。

 「赤旗」記事によれば、合意は既に知られている「安保法廃棄の一点」に留まらない。共産党は当初この一点だけの「国民連合政府」を提案し、その一点での野党共闘を訴えていた。ところが、市民連合という“緩衝材”を通し、それ以外の政策での共闘をつくり上げようとしているのだ。

 具体的には格差・貧困、女性・子供差別などの撤廃、累進所得税、法人課税、資産課税の「バランスの回復」、TPP反対、辺野古基地建設中止、原発に依存しない社会の実現―などだ。これらは15日発表の民進党公約「国民との約束」でも「格差を是正する税制改革」などに反映された。

 共産党は9日付の「赤旗」で「野党『共通政策』豊かに」と題して、「野党4党は、国民生活と民主主義にかかわる幅広い分野で、『共通政策』を豊かに発展させて」いると書いた。「安保法制反対の一点」のみと思った民進党議員には寝耳に水だろう。「民進プレス」は6月17日号で「赤旗」を後追いするように「市民連合との共闘を確認」と1面に載せた。

 どうも民進党は反安保法デモ以来、「市民」に弱い。「民進プレス」6月3日号に4月衆院北海道5区補選で惜敗した池田真紀氏と岡田代表との対談が載っているが、立候補の経緯について池田氏は「12月9日に『市民の会』※から私に立候補の要請があり、2日後には民主党北海道から要請を受け……『市民の会』は私に立候補を要請した翌日から、『野党は共闘』を求める運動を進め」、共産党などとの共闘が実現したという。欄外に小さく「※正式名は『戦争をさせない北海道をつくる市民の会』」とあり、対談記事の「市民の会」とは昨年来「赤旗」紙上を反安保法デモで席巻した「総がかり実行委員会」の北海道版なのだ。

 「総がかり実行委員会」には共産党及び同党傘下団体も入っている。対談の見出しは「市民の参加意識を高めた『聞く』選挙」だが、このような「市民」の言うことを聞いて回れば、共産党の言うことを聞くようになるカラクリが機能する。まんまと操られていると言えよう。

解説室長 窪田 伸雄