「赤旗」の1人区統一宣伝、民進欠く香川も一本化強調
参院選前に「確認書」公表
参院選が22日に公示される。これまでと最大の違いは「民共共闘」であり、32の1人区での野党統一候補だ。ところが11日にさざ波が立った。民進党香川県連が「統一候補」と報道されている共産党公認の田辺健一氏は支援しないと決めた。「全1人区」の一角が崩れたのだ。
香川をめぐっては民主・共産両党の機関紙に齟齬(そご)があった。統一候補擁立を宣伝する両党機関紙記事を見ると、「民進プレス」6月3日号1面には「2016参院選野党統一候補の擁立、全国に広がる!」(見出し)として選挙区の色分け日本地図と候補者顔写真が載るが、香川は緑色「1人区で5月30日現在未定」だった(同紙6月17日号7面地図でも緑色「6月13日現在未定」)。
「しんぶん赤旗」は5月31日付で田辺氏を「事実上の」統一候補と書き、6月1日付1面で「参院選 全1人区で野党一本化」と報道した。5日付には「参院選32の1人区で統一実現/共産党二つの決断」(見出し)との自画自賛の特集を組み、同欄に載る「野党統一の動き」の表には、5月27日に「香川選挙区でたなべ健一氏が全国で唯一共産公認の統一候補へ」とある。しかし、香川の民進党は「未定」の色分け(「民進プレス」)を「支援せず」に変えた。
が、機関紙の規模では象と蟻(あり)のようなものだ。「民進プレス」はタブロイド8㌻。一般紙(ブランケット判)の4㌻分で、これを月2回だけ発行している。日刊の「赤旗」は16㌻だから、1日にして「民進プレス」1カ月分の2倍の情報量を出している。さらに週刊の「赤旗日曜版」タブロイド版36㌻がある。発信力の差は歴然としている。一般紙も「赤旗」同様に32の全1人区で4野党候補一本化と報道した。
「赤旗」11日付は「香川県の民進党と共産党が交わした確認書」を写真入りで公表した。共産党批判に反論する記事の中にまぶしたものだが、民進党内“反動勢力”への見せつけだろう。15日付1面では香川選挙区を取り上げ、この確認書で民進党県連が協力しているように書いている。
機関紙の発信力の差は党組織力の差でもある。既に「赤旗」は、連日のように野党統一候補の街頭演説で並ぶ民主、社民、生活の代表者らの写真を載せている。そのうちの6月9日付は新潟県長岡市での演説会の記事で、「オールにいがた 平和と共生」が主催したとして超党派を印象づけている。これは沖縄県知事選で元自民党県連幹部の翁長雄志氏陣営の「オール沖縄」と同じ戦術だ。
「オール沖縄」の「オール」とは、自民党を離れた翁長知事の那覇市長時代の基盤である那覇市議会会派「新風会」を加えての「保革全て」の意味だ。が、「赤旗」の大宣伝と共産党の全面協力で当選した翁長知事の県政下で行われた5日の沖縄県議選で、「新風会」出身候補は2人落選し、伸びたのは共産党だ。蓋(ふた)を開ければ翁長知事恩顧の保守系は細り、共産・社民ら革新系が県政を担いでいる。「民共共闘」の行く末を暗示する統一戦線だ。
解説室長 窪田 伸雄