「自由民主」 ネット運動 コロナ禍でリモート演説
選挙・政治活動もデジタルトランスフォーメーション化へ
来年は選挙イヤーだ。衆院選は任期満了の10月21日までに行われ、東京都議選も夏にある。この年末年始は各党議員・候補者とも選挙区回りに拍車が掛かるところだった。
ところが、新型コロナウイルス感染再拡大でまたもや自粛の世の中だ。事実上の選挙運動の書き入れ時に、パーティーや忘年会、新年会もこれまでのようにはいかない。また、選挙本番までに感染を克服できるか分からない。このためネットを通じた運動がさらに進みそうだ。
自民党機関紙「自由民主」(12・15)は、「リモート形式で街頭演説/遊説局が『つじだちスピーチ』開催」(見出し)との記事を載せた。同党遊説局が11月27日に路上に設置した液晶画面を用いて、同党本部から小野寺五典組織運動本部長がリモート演説をしたものだ。この第1回「つじだちスピーチ」は、「聴衆からの質問に小野寺本部長が直接回答するなど、リモート形式ながら臨場感のあるやり取りが行われた」という。
同紙は「新型コロナウイルス感染症の終息が見通せない中、『ウィズコロナ』における政治活動の在り方として、弁士がリモート形式で参加するなど、感染対策を徹底して行われた」と紹介する。
ただ、リモートの「つじだち」を聞く街頭の聴衆は安全な間隔を取らなければならないので、あまり多くの人を集めることは期待できないだろう。人気の高い政治家が地方遊説をすれば人が群れたものだが、感染対策が叫ばれる今日、人を集めると「密」と言って罪悪視される。首相も何人かの会食で批判された。
このため、むしろ党幹部の地方行脚をテレワーク化した時間と移動経費の節約の方に政党のメリットはあるかもしれない。街頭のリモート演説放映現場が閑散としていても、動画配信のためのセンター会場という意味合いが強くなろう。
同紙の別の記事「青年局 選挙のSNS戦略を議論」(見出し)では、コロナ禍の中でネットを通じた選挙戦略を訴えている。「4月の衆院静岡4区補欠選挙で当選した深澤陽一郎党青年局次長、ネット戦略に携わった山田太郎党ネットメディア局長代理から話を聞いた」というもので、「感染リスクの高まる個人演説会を避け、SNSやホームページを積極的に活用」した深澤氏の「住民の安全に配慮した選挙運動」を参考にしている。
同紙では「山田局長代理は『SNSだけで勝てるわけではないが、SNSがないと勝てない』と述べて、SNSの効果的な活用が今後さらに重要になるとの考えを強調した」とある。
ネット選挙が解禁になり、18歳まで投票年齢が若くなっている時代であり、発信した内容をどれだけ有権者の携帯などの端末、特に若者たちに届けることができるか知恵の絞りどころだ。これは各党とも有権者にアクセスしてもらえるか、拡散するかの模索になる。
SNSは政策の争点に影響を与える可能性もある。例えば緊急事態宣言発令で多くの人が自宅待機で巣ごもり状態だった通常国会期間中に、反対が拡散したのが検察法改正案だった。
ネット上の野党の動きがあるにせよ、コロナ禍で休業の芸能人や有名人などがネット発信する時間が増え、政治が話題になることも一因とみられるが、影響は大きい。同じ時期に種苗法改正案もSNSで反対論が起き、成立が遅れた。
コロナ禍で政治活動にもデジタルトランスフォーメーション(DX)化が進むようになり、選挙に勝つプログラムが開発されるかもしれない。来年の選挙の一つの見ものだ。
編集委員 窪田 伸雄