各党紙に新型肺炎 政府緊急対応策に向け提言
声が小さい「流行」への備え
中国湖北省武漢市で発生した肺炎をもたらす新型コロナウイルスの感染が世界に拡大し、世界保健機関(WHO)は1月31日に緊急事態を宣言。各党の機関紙上でも2月は感染対策記事の量が多くなった。
週刊の自民党機関紙「自由民主」は2月4日号3面に「政府に万全期すよう求める」と党国際保健戦略特別委員会の会合(1・24)を扱い、2月11日号は2面トップに「新型コロナ対策本部を設置/感染拡大防止策の充実図る」「政府の対応を強力に後押し」の見出しで新型コロナウイルス関連肺炎対策本部の設置(1・27)などの動きを載せた。
また、同紙2月18日号では1面トップに「水際対策や医療体制を強化」「新型コロナウイルス対策で提言」の見出しで、同本部が7日に安倍晋三首相に10項目の施策を提言したことを強調している。
日刊の公明党機関紙「公明新聞」はさらに詳細であり、1面トップだけでも1月29日、2月1、7、13、14、15、18、19、20日付と続いた。同党も1月27日に新型コロナウイルス感染症対策本部を設置し、6日に安倍首相に緊急提言を渡した(7日付)として「自治体と連携密に/検査迅速化へ最新技術、柔軟に導入」などと報じた。
政府が13日に総額153億円の緊急対応策をまとめると、自由民主2月25日号は2面で「党の提言を色濃く反映」、公明新聞2月14日付は「公明の提言数多く反映」とアピールした。
また、月1回発行の国民民主党の機関紙「国民民主」2月21日号トップも、「新型肺炎対策万全求め提言」の見出しで扱っている。党新型コロナウイルス対策本部が取りまとめた「新型コロナウイルス関連肺炎について万全の対策を求める緊急申し入れ」を1月30日に菅義偉官房長官に手渡し、同31日に政府から得た回答内容を掲載している。
与野党とも「万全」を政府に求め、自らの提言が政府の対応策に反映されたと訴えているわけだ。
ただ中国は、東京都ほどの1000万人余りも人口がある武漢市を封鎖するというわが国では行い得ない強権で対策を打ったが、感染者は千の単位、万の単位へと急拡大し、今や8万人に迫っている。韓国でも急に百の単位を超えた。果たして「万全」は新型コロナウイルスに通用するのか?
20日時点でわが国での感染者は、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の621人、それ以外で88人が確認された。むしろ、政治には国内流行の事態も想定した対策も必要だろう。
公明新聞2月15日付には「2009年に新型インフルエンザが世界的に流行した際、羽田空港で検疫所支所長」だった医師である秋野公造参院議員へのインタビューを、「冷静な対応今後も重要に/病状や治療法は風邪などと同じ/高齢者、有病者は特段の警戒必要」などの見出しで扱っている。
ここで秋野氏は、「渡航歴のない人の感染が増加し始めており、流行した場合に備え、重症化し得る患者を早期に治療につなぐための検査と医療の体制は今のうちに整備しておく必要があります」「大事なことは、感染の拡大を遅らせて、その間に医療体制の整備や迅速に検査できるキット・治療薬の開発など『国内感染対策』を進めることです」と述べている。
つまりインフルエンザ同様、新型コロナウイルスも流行してしまうものなのだ。政府の緊急対応策は「万全」というより感染を遅らせる当面の対処であり、流行に備えた準備を整えるまでの時間稼ぎであろう。しかし、流行に備えよと言うには各党機関紙上の声はまだ小さい。
編集委員 窪田 伸雄











