台風災害と与党紙 支援、視察を連続トップで
八ツ場ダム治水効果に注目
台風の猛威で東日本が甚大な災害に見舞われて1カ月余り経ち、各党のメディアでも被災地視察や災害対策に関する内容が多く取り上げられた。困ったときの人助けも政治家ならなおさらのことであり、被災地は選挙区そのものだ。
週刊の自民党機関紙「自由民主」の1面トップを見ると、「台風19号 総力結集し被災地支援」(10・29)、「生活再建へ政府・与党挙げ尽力」(11・12)、「新経済対策の策定へ議論開始/災害対応と国土強靭化を最優先」(11・19)、「きめ細かな支援の実現へ尽力/党役員ら続々と被災地を視察」(11・26)などの大見出しで、ほぼ連続して訴える力の入れようだ。
10月29日号では10月13日の同党声明「令和元年台風19号による被災からの一日も早い復旧・復興に向けて」を載せるとともに、二階俊博幹事長の同17日の4県被災現場視察を扱う中で、「治水効果を発揮したとの声も上がっている八ッ場ダム(群馬県長野原町)の建設現場を訪れた」ことを報告した。
二階氏の八ツ場ダム視察については、11月12日号の2面で改めて取り上げており、来年完成予定の同ダムの試験湛水が10月1日に始まったところ台風19号が12~13日にかけて豪雨をもたらし、「試験湛水中であったにも関わらず約7500立方メートルの雨量を貯留。下流の堤防への圧力緩和に大きく貢献した」と指摘した。
八ツ場ダム建設は、2009年に政権交代した民主党政権が「事業仕分け」のリストに入れ、中止しようとしたことがある。同党が「コンクリートから人へ」のスローガンで掲げた公共事業費カットのやり玉に挙がり、ゼネコン業界を潤すための税金の無駄遣いとみなされた。
記事は、現地で二階氏が語った「治水の努力に無駄はない」で書き出している。民主党政権時代の中止論議には触れていないが、「コンクリートから人へ」に対抗して自民党が打ち出したのが「国土強靭化」であり、野党時代に民主党政権と対立した八ツ場ダム問題で、建設したダムの効果を強調したものだ。
また、公明党の日刊の機関紙・公明新聞も八ツ場ダムの治水効果ほか台風関連記事を多数掲載。11月17日付1面の同党の結党55周年の紙面に持ってきたのも被災地視察だった。「台風被害 苦闘続く被災者のもとへ/どこまでも寄り添う」の見出しで、山口那津男委員長はじめ4人の党幹部の被災地入りを写真入りで記事にした。今年の結党記念日に公明党議員らの「『大衆とともに』の立党精神を体現した」活動として、災害対策・被災地支援が最も必要に迫られているとの認識を示している。
ただ、自民党と公明党は共に政府・与党で補正予算編成の当事者であり、災害対策で強みがある半面、対応に瑕疵(かし)があれば強い批判を浴びる。
昨年7月の西日本豪雨災害では、自民党議員による宴会写真のSNS投稿について非難が沸き起こったが、この臨時国会で野党が追及しているのは「桜を見る会」の饗宴(きょうえん)などだ。かつての公共事業をめぐる是非論も地球温暖化が原因と見られる台風の激甚化のためか、「国土強靭化」に説得力が増したといえよう。
なお、台風19号被害のあった宮城県の県議選(10月27日投開票)で自民党は1議席増の28議席獲得、公明党は現職4人全員当選を、福島県の県議選(11月10日)で自民党は、「改選前から2議席上積みするとともに…16年ぶりの単独過半数を獲得」、公明党は現職3人と新人1人の4人全員当選の1議席増と両党の機関紙上で報告している。
編集委員 窪田 伸雄






