NHKの左傾化
統制が効かないEテレ
先の参議院選挙で議席を獲得した「NHKから国民を守る党」(N国党、立花孝志代表)が注目を集めるとともに、NHK改革への関心が高まっている。
月刊「正論」10月号が特集「本当に『みなさまのNHK』?」を組んだのはそんな背景があるからだ。NHK改革のポイントは大きく二つある。N国党の主張するスクランブル化と番組の左傾化だ。
同誌の特集で、政策シンクタンク代表の原英史はスクランブル化について「結論からいえば、正論だ」(「諸悪の根源は政治との『談合』にあり」)と述べている。スクランブル化とは、見たい人だけが受信契約し、契約しない人が見ることができないようにスクランブルをかけて放送する制度だ。
この制度の実現を訴えるN国党が参議院選挙で約99万票を獲得したことは、テレビを持たない人でも、ワンセグ機能の付いたスマホを持っているだけで、受信料を払うことを義務付ける法律に対する反発が広がっていることを示している。しかし、主張としては正論だとしても、災害時の公共放送として使命の重要性を指摘する声もあって、国民多数の支持を得るのは難しい。
もう一つの左傾化だが、その代表的な例として、ジャーナリストの櫻井よしこは、経済評論家の上念司、立花との鼎談(ていだん)「公共放送の資格なし!」の中で、2001年に、当時の教育テレビ(現Eテレ)で放映された一つの番組を挙げた。それはシリーズ「戦争をどう裁くか」の第2回目で、その内容は昭和天皇を被告人にして「女性国際戦犯法廷」という模擬裁判を開き、「有罪」にしてしまうという異様なものだった。
これに限らず、Eテレには最近、LGBT(性的少数者)に関する番組など、伝統的な価値観・文化を破壊する左翼思想を背景にした番組が多いが、これについて、立花は「『Eテレ』というのは、正直、グリップが効いていないのです」と述べ、報道局の監督下ではないことを指摘した。
一方、NHK出身の参議院議員、和田政宗は「NHKの『左傾化』という言葉は、私はこれまであまり使ってこなかった。しかし、『ニュースウオッチ9』などの番組を見れば、本来、公平公正、高いジャーナリスト意識を持って報道すべきNHKが偏ってきていると言わざるを得ない」(「セクハラ、左傾化…これが公共放送か」)と危機感を募らせ、NHKの解体的出直しを訴えた。NHK改革について、論壇だけでなく国民的議論が必要な時期に来ていると言える。(敬称略)
編集委員 森田 清策