出会い系通い元官僚の「授業」
自分の子には拒否が多数派
義務教育段階の子供に対する教育を考える上で、論壇に不思議なことがある。あまり保護者の立場に立った議論が少ないことだ。保護者に教育権があることは議論の余地がないのに、なぜか保護者よりも左翼の教育学者の声があふれる。
文部科学省の前事務次官、前川喜平が名古屋市内の公立中学校で「授業」したことに対して、前川を招いた学校を監督する市教育委員会に、同省が報告を求めた問題。出会い系バー通いをした上、同省の天下り問題で懲戒処分を受け退職した人物だから、当然のことだと思われたが、新聞・テレビと野党は逆に、同省と、この問題を同省に照会した自民党の国会議員への攻撃一辺倒になった。「教育の不当な支配」になると、騒いだ教育学者もいた。
だが、「ふつう」の親はこの問題をどう思ったのか。その観点から、「正論」6月号に掲載されたフジテレビ上席解説委員、平井文夫の論考「出会い系バー通い 前川喜平を持ち上げたメディアの罪」が興味深い。
平井は同局のサイトに「前川氏の授業、自分の子供に受けさせたいですか」というタイトルのコラムを書いたところ、コラム始まって以来のアクセス数があった。しかも「受けさせたくない」という自分の意見に同調する「冷静な意見が多くてホッとした」という。
そして、メディアは「前川擁護」一色だったが、「実はサイレントマジョリティー(沈黙する多数派)がその名の通り沈黙しているだけなのか…」と問題提起している。
ならば、前川を招いた中学校や市教委に抗議があるだろうと思われるが、その辺の事情について、平井は次のように解説する。
学校に不満を持っていても、保護者は「文句を言えば目をつけられて内申書に悪く書かれかねないので、泣き寝入りをせざるを得ない」。つまり「子供を人質に取られている」から、何も言えないのだ。左翼教師が跋扈(ばっこ)する原因はここにもありそうだ。
(敬称略)
編集委員 森田 清策