メディア萎縮の真相 政府の圧力は捏造

左派記者らの印象操作

 加計学園問題では、怪文書にも等しい文科省内のメモが報道機関にリークされた。それに基づいて、メディアは自由に疑惑を報道した。また、前文部科学事務次官が記者会見を開き、加計学園による獣医学部新設には「総理の意向」があったのではないかと主張した。このほか、自身の風俗通いが報道されると、女性の貧困問題の「調査」のためだったと、信じがたい釈明(後に撤回)を行い、それを好意的に伝えたメディアも存在する。日本では、報道の自由がしっかりと守られていることの証左である。

 だが、「国境なき記者団」(RWB)が毎年発表する「報道の自由度ランキング」における日本の順位は今年版、180カ国中72位だった。2010年版は11位だった。過去7年間で、報道の自由度が大きく低下したと実感する国民は少ないだろう。にもかかわらず、なぜランキング低下が起きているのか。国際社会におけるわが国に対する評価にも影響するランキングだから、放置しておけない問題だ。

 報道の自由に関する日本の実情とRWBランキングとの落差に関して、大正大学名誉教授のアール・キンモンスが優れた論考を「Voice」9月号に発表している(「『報道の自由度ランキング』の嘘」)。

 RWBランキングの低下については、左派メディアは安倍政権による報道抑圧を指摘する。しかし、ランキング低下は民主党政権下から始まっている。

 民主党政権から安倍政権に代わったのは2012年12月だ。ランキングは12年版の22位から13年版53位と大きく下がったから、安倍政権による報道への圧力によって下がったように報道される。しかし、13年版は、12年の報道の自由についての評価で、この年は民主党政権下だったのだ。

 13年版でランキングが下がった理由について、キンモンスは「福島原発事故に関わる情報公開と報道の在り方が主な原因だとされている」と述べている。また、RWBについては、「この団体は福島の原発事故、最近では沖縄の基地移設問題に強い関心を注いでいる」「日本の報道に対する主観的な意見を表すものにすぎない」としている。つまり、安倍政権による報道抑圧よりも、RWBの政治的なスタンスが12年版から13年版での大きなランキング低下と、その後のランキング低下に影響していると考えて間違いない。

 日本のRWBランキング低下については、「表現の自由」に関する国連特別報告者デービット・ケイも言及している。ケイは今年春来日し、日本政府による報道機関への圧力があるとの偏った見解を表明した人物。

 もちろん、日本政府は事実誤認があると批判したが、そのケイ自身に対する批判については、「医師の診断を受けていて、健康な体ではないと言われて、医師を誹謗(ひぼう)しているようなものである」と指摘したのは、早稲田大学ジャーナリズム研究所所長の花田達朗(「ジャーナリズムと市民社会の再接続」=「世界」9月号)だ。

 ケイを医師に例えることが適切な表現とは思えないが、医療の世界でも、診断を誤る医師はいる。だから、セカンド・オピニオンを求める人が増えている。自分の主張に沿ったものであるならば、たとえ偏ったランキングだろうが、人物だろうが、それらを利用した記事や論考が左派メディアにあふれている事実を見ても、わが国の報道の自由度は高いことが分かる。(敬称略)

 編集委員 森田 清策