「LGBT支援」不要論

「区別」と「差別」は違う

 同性カップルを「夫婦」と同等に扱う「パートナーシップ条例」が昨年、東京都渋谷区で施行されて以来、同様の取り組みを行う自治体や企業が増えている。一方、いわゆる「LGBT」(性的少数者)の同性カップルと男女の関係を同等に扱うことに反対する人には、「差別主義者」「異性愛主義者」のレッテルが貼られている。こうした風潮が広がるのは、左翼的な「人権」思想が「区別」と「差別」を峻別(しゅんべつ)する判断力を弱めているからではないか。

 前衆議院議員の杉田水脈氏が月刊「新潮45」に論考「『LGBT』支援なんかいらない」を寄せている。その中で、同氏はブログにLGBT支援は不必要と書いたところ、「ツイッターをはじめとするネットは大炎上」したことを明らかにしている。同性愛問題について否定的な意見を書くと、集中砲火を浴びるという現象はかなり前から起きている。渋谷区の条例制定以降は、それがさらに激しくなり、たぶんそれは組織的な動きなのだろうが、同氏が自らの主張を曲げないところは称賛に値する。

 LGBT支援は不必要とする杉田氏の論拠は三つある。一つは「差別と区別は違う」ということ。同氏は国会議員時代、「男女平等は絶対に実現し得ない妄想」と発言し、「多方面から批判」を受けたという。しかし、男女の問題は「差別ではなく区別」という基本認識のどこが間違いなのか。そして、男女の関係からは子供は生まれるが、同性カップルの関係からはそれはあり得ない。だから、男女の関係と同性カップルを同じに扱わないとしてもそれは差別でなく区別である。

 二つ目は、日本では基本的人権が保障されており、そこにはLGBTも当然含まれる。それ以上を要求するならそれは「LGBTの特権」主張になり、それは認められない。三つ目は、地方自治体は、増え続ける生活保護、児童虐待など取り組むべき課題が山積する。その中で、LGBT支援は優先順位として、「人手を割いて取り組むほど重要課題」ではない――。

 この内容のうち、ブログで特に問題となったのは「LGBTの人たちには生産性がない」と書いたこと。同性カップルの関係は生殖につながらないことを指摘したのだが、それに対して、「男女のカップルでも子供ができない人がいる。それを切り捨てるのか?」と反論があったという。

 だが、これは言いがかりでしかない。生物学的に生殖につながらない関係と、男性あるいは女性のどちらかに、何らかの問題があって不妊になることは根本的に違う問題で、それを同列に論じるのは筋違いである。そんな正論を述べても、ブログが炎上するのはLGBT問題がもはや“社会革命運動”になっているからだろう。

 編集委員 森田 清策