大麻汚染低年齢化、乱用防止教育を充実させよ
「大麻汚染」が未成年者の間に広がっている。「うちの子に限って」と楽観している保護者が多いだろうが、今の中高生はスマートフォンの普及で売買情報に簡単にアクセスでき、その影響が大きい。学校で乱用防止教育を充実させるとともに、保護者も薬物に関する正しい知識を持ち、家庭で子供たちにその危険性を伝える努力が必要だ。
ネットで売買情報に
大麻乱用の低年齢化は統計にはっきり表れている。未成年の検挙者数は2014年、80人だったが、昨年は400人を超えた。今年前半の逮捕者は283人(全体2093人)。通年で見れば、昨年を超えるペースだ。そのうち、高校生は51人、中学生も4人含まれている。これらは氷山の一角だろう。
京都府警は今年3月、大麻草を所持した疑いで当時中学3年の少女を逮捕したが、少女に大麻を売ったとして逮捕されたのは当時19歳の神奈川県内の男だった。2人の接点はインターネット。少女がツイッターに「大麻がほしい」という意味の隠語で投稿し、それを男が見つけて京都市内で受け渡したのだ。
国立精神・神経医療研究センターが昨年、全国240校の中学生を対象に行った調査によると、大麻の経験率は0・3%。大麻乱用を「少々なら構わない」「まったく構わない」と肯定した生徒は1・9%だった。いずれも16年の前回調査よりも増加している。さらには、8・4%が大麻は「なんとか手に入る」「簡単に手に入る」と回答した。
こうした統計や事件で浮き彫りとなるように、ネット社会の中で誰でも薬物の売買情報にアクセスできるようになったことが、大麻汚染の低年齢化を招いているのだ。ネット上には「たばこよりも害が少ない」「依存性が低い」など誤った情報があふれ、それをうのみにして手を染める未成年者は少なくない。
一方、海外ではカナダが昨年、大麻を合法化し、ほかにも解禁の動きがある。これらの情報に接することが未成年者の抵抗感や罪意識を薄め、大麻汚染の低年齢化を助長しているのだ。
大麻は脳にダメージを与え、認知機能や記憶などの障害を引き起こす。成長途上にある若年層が受ける害は特に深刻で、依存性も高くなる。さらには、その依存性から他の薬物に誘う「ゲートウェイドラッグ」と呼ばれる。乱用は人生を破滅させることを徹底的に伝えていく以外に、その魔の手から未成年者を守るための手だてはない。
義務教育の段階から、薬物の危険性についての正しい知識を身に付けさせ、誤った情報に惑わされずに乱用の誘いを断ち切る強い意志を持たせることが必要だ。保護者が乱用防止講習会に参加し、家庭もその役割を担えるようにしてほしい。
報道の在り方にも注意を
大麻取締法違反の罪に問われたアイドルグループ「KAT-TUN(カトゥーン)」の元メンバーと元女優に執行猶予2年の判決が下った。人気タレントによる薬物事件が頻繁に起きるが、メディアの報道の在り方も注意が必要だ。中高生はメディアの影響を受けやすい。興味本位を避け、乱用防止に資する報道を心掛けるべきだろう。