過激な性教育推進団体関係者オンパレードで作るNHKの性教育番組
◆配慮不可欠なテーマ
人間にとって「性」ほど、宗教や文化によって考え方が異なるテーマはない。アイルランドで先月末、国民投票の結果、妊娠中絶が容認されることになった。カトリック教徒が8割を占めることから、これまで禁止されてきたのだ。
戦後間もなく中絶が合法化され現在、年間約18万件の“堕胎”が行われているわが国ではピンとこない人が多いだろうが、米国でも中絶の是非は、4年ごとの大統領選挙の争点として必ず浮上する。
これほどセンシティブなのが性。特に中絶、避妊そしてLGBT(性的少数者)について学校で教える場合、価値観の違いや子供の成長段階への配慮が欠かせないが、それを軽視して行われたことで問題になったのが東京都足立区の公立中学校で3月に行われた性教育である。
にもかかわらず、この性教育を問題視した東京都教育委員会の対応を「時代錯誤の政治介入」と批判する一方、子供に早い段階から知識を与える性教育を後押しするNHK番組の偏向性については5月13日付のこの欄で指摘したが、その後も続く性教育推進番組をウオッチして気付いたことがある。早期からの性教育を推進する「“人間と性”教育研究協議会」(性教協)と、NHKの濃過ぎる関係であり、そこに偏向の根があることだ。
足立区の中学校で性教育を行った教諭は性教協の幹事だったことは既に本紙が報じているが、NHKの番組には今、性教協の関係者が頻繁に登場している。
◆対立構図に仕立てる
例えば、朝のニュース番組「おはよう日本」は5月19日放送で、性教育を取り上げた。「ピルはコンドームと違って、コンビニでは買えません」などと、足立区で行われた授業の様子を映し出した後、番組は「この授業を問題視したのは、都の教育委員会でした」と解説したが、この授業に疑問を持つ人は一般にも多いはず。
あえて教師VS国・都の対立構図に仕立て上げるところに、番組の偏った思想がにじみ出ている。そして、この授業づくりに関わってきたという埼玉大学教授の田代美江子を登場させて、「学校で性について意見交換するのは大切」と授業を正当化するコメントを引き出したが、田代は性教協代表幹事の一人である。
性教協関係者オンパレードだったのが5月28日放送のEテレ「ハートネットTV」で、この日のテーマは「もうひとつの“性”教育プロジェクト」。ここで取材したのが50年前から性教育を続けている私立の女子高校(都内)。その授業を行った保健体育科の教諭、小田洋美も性教協の幹事(著書『ガールズセックス』の略歴による)。
その小田は「小さい頃から偏見ってあるじゃないですか、親からも、社会からもそうだし、中1の授業をやる時は刷り込まれていることを全部取り除いてフラットな状態から(性教育を)始める。それが大変な作業」と語る。この考え方がいかに危険なものかは賢明な読者ならすぐ分かるはず。冒頭、宗教などによって、性についての考え方は大きく異なることを指摘したが、家庭で行う道徳教育も偏見だとして「フラット」にされかねないのである。
◆異常な思想の持ち主
さらに、立教大学名誉教授の浅井春夫も登場し「コンドームの使い方を知らなかったら、セックスする資格は、基本的に私はないと思うが」と独善的な話をした。この浅井も性教協の代表幹事。
性教協は1982年、山本直英(故人)らによってつくられている。その考え方の特徴は、性行為をするかどうかの選択権を、人間の究極的な「権利」と捉え、性教育を「人権教育」に位置付けること。そもそも、番組が取材した学校は、この山本がかつて副校長だったところである。
人権教育と言いながら、その思想の異常さは彼の著書「セクシュアル・ライツ」にある次の言葉が示している。「<セクシュアル・ライツ>をなんと訳したらいいと思いますか。<性的人権>とか、<性的権利>などが適訳だと思いますが……私はこの言葉の別訳として、<性の自由>から帰納して、さらに<性器の自由>という意訳を提起したい」。彼らにとって、宗教的戒律や性道徳・規範は“性器の自由”を阻害する要因でしかないのである。そんな性教協関係者を頻繁に登場させるNHKの番組製作者はその思想に染まっているということか。(敬称略)
(森田清策)





