日大アメフト問題で「黒幕」指摘する新潮と理事長の“黒い人脈”暴く文春

◆就活で日大生苦境に

 初期対応を誤ったために、痛くもない(実際はかなり痛い)腹を探られる羽目になった日本大学。週刊誌にとっては格好の話題だ。アメリカンフットボールの試合で日大の選手が行った反則を契機に、それを指示したとみられる監督・コーチだけでなく、大学本体の理事長までがメディアの好餌となっている。

 「『日大』の断末魔」の特集を組んだのは週刊新潮(6月7日号)だ。アメフト部の監督(事件後辞任)であり日大ナンバー2の常務理事(1日に辞任)である内田正人氏の“指導術”や、直接選手に反則を指示したとされるコーチの井上奨氏の実家の話など、一通りほじくれば出てくる話を載せている。

 その中で、他のメディアではあまり触れていない話題があった。「黒幕コーチ」の存在だ。日大アメフト部OB、日大理事で、理事長の田中英寿氏の「懐刀」と言わる人物が「監督の指示でないと言え」と、選手と保護者に「圧」を加えたというのである。もはや“フェアプレイ、日大”(応援歌「花の精鋭」)とは歌っていられない教育機関とは思えない日大の黒々とした人脈が裏でうごめいている様子が伝わってくる。

 「面接は針のむしろ!」の記事では、折からの就職活動中の日大生の苦境をまとめた。大学のイメージは下がり、面接でこの話題を振られて答えに窮する学生たちが“針のむしろ”に座らされているというのだ。

 だが、同時に「バンカラ色の強い」日大生ならではの切り返しをしている強者もいるようで、「“話題の日大から参りました◯◯です”と言うようにしている」とか、「大学が加害者で日大生は被害者。どうして僕らが肩身の狭い思いをしなきゃいけないんですか!」と切り返し、悪条件を逆手に取って自己アピールをするたくましい学生たちもいるそうだ。

 しかし、大多数の日大生にとって、大学が足を引っ張っていることには変わらない。大塚吉兵衛学長が「よしなに」と会見したが、就活の前線に立っている学生たちには、2016年に新設した危機管理学部が皮肉に映るほど、現在の大学の対応は何の助けにもなっていない。

◆暴力団と親密な関係

 一方、週刊文春(6月7日号)の関心の焦点はアメフト部や内田氏よりも別のところにあるようだ。照準は田中理事長にピタリと合わされている。超巨大私学の頂点に立つ同氏の“黒い人脈”を暴いているのだ。

 同誌は前号(5月31日号)で「田中氏と六代目山口組の司忍組長、住吉会の福田晴瞭前会長との親密写真」を掲載した。今号では「新たに二枚の現物写真を入手した」として、「山口組系司興業の森健司組長、もう一方は、山口組系佐々木一家の山本岩雄組長(故人)」の写真を載せている。

 経営側とはいえ、教育機関の長として、暴力団との「親密」な付き合いがあるというのは明らかにふさわしくない。しかも、田中氏は理事長になる以前の職員の時から、「暴力団との付き合いを堂々と自慢して」いたというから、そのような人物を理事に、さらには理事長に選んだ学校法人の人選は大いに疑問だ。

 日大と言えば、総長選のたびに怪文書が飛び交うなど激しい権力闘争が繰り広げられてきたイメージがある。田中氏は暴力団との付き合いをちらつかせて学内権力闘争を勝ち上がってきたのだが、写真の暴露で今回は自身が攻撃にさらされる境遇となった。

◆フェアプレーが第一

 田中理事長は、酒が入ると、「勉強なんて東大に任せておけばいいんだよ。こっちはな、数と喧嘩だったら誰にも負けねえんだ」とうそぶいていたと同誌は伝える。よく受け止めれば、こういう学生スポーツを売り物にした「スポーツ日大」を目指していこうという日大の経営自体は間違っていない。だからこそ、相手に敬意を払ってルールを守る本来のスポーツを教え、行うべきだ。

 トップに暴力団との関係疑惑があるというのは、社会のルールに反する。もしそれが日大運動部に“ルール無視の勝利第一主義の体質”をはびこらせていたとすれば、一刻も早く除去すべきだろう。

 「フェアプレイ、日大」と声高らかに「花の精鋭」を歌えるようメディアも見守るべきだ。

(岩崎 哲)