中等教育のあるべき姿見えてこないサンデー毎日の大学合格関連記事

◆「ランク付け」高じる

 従来、新聞社系の週刊誌は、親メディアの新聞で受験戦争の過熱ぶりに非難のつぶてを加えながら、当の誌面ではいち早く有名大学の出身校ランク付けをにぎにぎしく掲載してきたことで、世の顰蹙(ひんしゅく)を買ってきたが、それでもカエルの面に何とやら、いまだにその「ランク付け」をやめられない。いや、それが高じて、有名私大合格者数の比較など、さまざまな切り口を見つけ出している。

 昨今は12月ころから、あるいは夏場の記事枯れの時期にも、有名高校の品定めの記事が出るようになった。なし崩しといった感がある。

 いやはや、と言うか、サンデー毎日(4月23日付け)では「全国3436高校 有名181大学合格者数」と銘打って、全国の各高校の大学進学状況を総まくりしている。なんと96ページを使って、各高校の生徒の進学先を載せているのである。

 例えば、東京の錦城学園の項では、明治大学3人、中央大学3人、法政大学3人など、東京六大学、他の私立校、工学系大学、女子大への進学者数などが記されている。記事といっても、数字をこねくり回しただけのものだ。統計数字を延々と見せられるだけでは、高校教育の実相や、今日の中等教育の問題点といったものが決して見えてこない。

 有名大学出身校ランク付けの3月期掲載の定番化の狙いは、一つには、教育現場の実務者、一部受験生らに一定の需要が見込め、その号の発行部数が確保できるということがある。今回サンデー毎日が扱ったものについては「本誌と週刊朝日、大学通信による3社合同調査」という注釈が付いているので分かるが、大学・受験情報を専門的に取り扱う会社と提携し、その関係名簿を手に入れる仕組みなのだろう。手間暇かけずに編集が可能だ。

◆「徒歩圏」広告は論外

 それに何と言っても、掲載記事とタイアップした形での教育関係機関の広告取得のうまみがある。今回、高校、大学、大学の付属機関のPR広告が約70本も掲載されている。今、雑誌類への一般企業の広告出稿は目に見えて減ってきている。それに対し、教育産業の隆盛という事実に着目した96ページの統計記事であるのは一目瞭然だ。

 その学校紹介広告も、「学力を伸ばす学校都内NO.1」「王侯将相いずくんぞ種あらんや/集え、○○へ!」「『本来の学校らしさ』を求める学校」などのキャッチフレーズで目を奪うものが少なくない。「2019年春、駅チカに移転 駅から徒歩圏内に! ○○中・高等学校」となると、学校かどうか頭をひねる。

 広告の内容については編集部の関与するところでないのだろうが、その週刊誌がPRの場を提供していることで、教育機関・内容のブランド化、商品化にずいぶん手を貸している。

 ただし、受験雑誌よろしく「速報」の大々的な見出しで、高校別の大学合格者数の順位が掲載されることの一般読者の抵抗感は減じているようだ。豊かな経済社会で、子供たちの将来についての選択肢は多くなってきて、今さら、高校トップ10でもなかろう、というわけだ。メディアも目くじら立てて「受験戦争の弊」を追及しなくなった。

 しかしそのことは、中等教育かくあるべし、といった議論は必要なし、ということではまったくない。受験戦争は激化こそすれ減じていない。“お受験”に備えようと親たちが奔走している。今こそ、大学前教育の在り方が問われるべきであり、その痛切さは大学入学試験方式の試行錯誤に現れている。

 東大を例にとれば、推薦入学を導入したり、入学時期についての試行錯誤がしばらく続いていた。矢継ぎ早の提案には、国内外の本当に優秀な学生たちを見つけたいという意図と算段があり、大学側の今の受験体制に対する不満、危機感が現れている。受験戦争の現実と大学側のいら立ち、そのギャップが著しいのだ。

◆教育商品化に危機感

 高校のランク付け、教育機関のブランド・商品化は、教育の現状に対する危機感とは真逆のリアクションの一つだろう。教育の在り方を真剣に追求すべきだ。その時代の要請に対し、サンデー毎日や週刊朝日の「高校別ランキング」への力の入れ具合は大いに疑問である。

(片上晴彦)