「家庭教育支援法」は必要だ


 家庭教育は子育ての基本のキだ。ところが、都市化や核家族化などによって親たちが身近な人から子育てを学ぶ機会が減っている。そこで国や自治体が責任を持って家庭教育を支援する。そんな趣旨の「家庭教育支援法案」が来年の通常国会に提出される見通しだ。家庭教育を支える環境は悪化している。同法制定は喫緊の課題だ。

 来年の通常国会に提出

 教育は学校で突然に始まるわけではない。その出発点となるのが家庭だ。「三つ子の魂百まで」と言われるように学校以前の幼少期に人格の基礎が形成される。学校教育の成果を挙げるには、家庭が健全育成の基盤となっている必要がある。

 ここから家庭教育の重要性が知れる。世界人権宣言は「家庭は、社会の自然かつ基礎的な集団単位であって、社会及び国の保護を受ける権利を有する」(16条3項)としている。家庭が人の命と心を育み「個の尊厳」の基礎になるからだ。

 国際人権規約も「できる限り広範な保護及び援助が、社会の自然かつ基礎的な単位である家族に対し、……与えられるべきである」(A規約10条1項)と定めている。家庭教育への支援はその柱となるものだ。

 想起すべきは家庭において両親、兄弟、祖父母などと織り成す人間関係や近隣の人々との関わりから、高い倫理観や道徳心、利他主義が育まれ、公民(国民)が生み出されるということだ。そこから安定した社会や国家が形成される。

 ところが、旧教育基本法は家庭教育についてほとんど触れていなかった。そこで2006年の改正教育基本法では「家庭教育」の項を設け(10条)、「保護者は、子の教育について第一義的責任を有する」とし、「生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努める」とされた。

 また、国と自治体は「家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずる」とうたわれた。

 これを受け、文部科学省は子育てサポーターリーダーなどの人材養成や専門家から成る「家庭教育支援チーム」による相談や学習の場の提供、「早寝早起き朝ごはん」国民運動などの支援を行ってきた。政府の教育再生実行会議も「家庭の役割」などをテーマに議論を始めた。

 この流れを確固たるものにするのが家庭教育支援法案だ。同法案は家庭教育を「国家と社会の形成者として必要な資質を備えさせる」と規定。文科相が「家庭教育支援基本方針」を定め、これに基づき自治体も基本方針を作成し、地域住民はこれに協力するとしている。

 国や自治体の当然の責務

 これに対して一部メディアは「憲法改正への布石」とか、「公」が家庭教育に関与しかねないなどと批判しているが、筋違いも甚だしい。

 地域では「子供の貧困」など困難を抱えた家庭の増加が指摘されている。それを国も自治体も放置できない。地域住民と力を合わせて家庭教育を支援するのは当然の責務だ。