違法教員への罰則規定設けよ


 公職選挙法が改正され、来夏の参院選から選挙権年齢が18歳以上に引き下げられる。これに伴い高校生も投票できるようになり、「主権者教育」が課題となっている。文部科学省は模擬投票など実践的内容の副教材を配布する予定だが、教育現場では教員が主権者教育を盾に政治的中立から逸脱しないか、懸念が広がっている。

 来夏から高校生に選挙権

 来夏の参院選では18歳になった高校生が選挙権を得て投票が可能となる。そのため政治や社会の活動への理解を深め、有権者としての自覚と責任感を高める。それが主権者教育の趣旨だ。

 ところが、日教組は「若者の政治参加促進のみに矮小(わいしょう)化し、単なる選挙制度の周知や模擬投票の実施などに終始するべきではない」(岡本泰良書記長)として「政治教育」に踏み込もうとしている。

 もとより主権者教育は単なる選挙制度の周知に留まってはならない。教育基本法は政治教育について「良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない」(14条)としており、「良識ある公民」の育成を目指す政治教育は推奨されるべきだ。

 だが、その一方で同条は「(学校で)特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」としている。

 それにもかかわらず、日教組は違法な政治活動をしばしば学校現場に持ち込んできた。

 例えば、日教組傘下の北海道教組は2009年の総選挙で組合教師にチラシ配布や電話作戦などの動員行動を指示し、1人につき5人の支援者獲得を強要。校内では選挙活動を隠語で「道徳活動」と呼んでいた。04年参院選をめぐっては神奈川県教組委員長が有罪判決を受けたほか、山梨県教組がヤミ政治献金を教員らに要請し、委員長ら関係者多数が処分された。

 こうした政治活動を容認すれば、有権者となった高校生も「支援者獲得」の対象にされるばかりか、改正公職選挙法は重大な選挙違反をすれば成人と同様、刑事裁判に掛けるとしているので、高校生の未来が奪われる事態も生じかねない。

 現在、安全保障関連法案をめぐって左翼教組が各地で反対運動を展開しており、デモや集会では教組の幟(のぼり)が林立している。兵庫県高教組は「(高校生が)自ら判断し、行動する主権者に成長させることが教職員の責務」として、反安保法案の「高校生向けチラシ」を作成し、校門前や高校生の集まる駅頭で配布している(日本共産党機関紙「しんぶん赤旗」6月4日付)。

 このような教組の政治活動は枚挙にいとまがない。それだけに高校生が有権者となることで、違法な政治教育に拍車が掛かるのではないか。そんな懸念が高まるのは当然だ。現行の教育公務員特例法は教員の政治的行為を制限するものの罰則がなく、ザル法も同然だからである。

 偏向教育を防止すべきだ

 このため自民党文科部会は、政治的中立から逸脱した高校教員に罰則を科すため同法の改正を政府に提言した。理解できる提言だ。偏向教育の防止へ法改正を急がなければならない。

(7月27日付社説)