竹富町の違法教科書使用、石垣市の革新市長候補を沖縄紙が後押し
◆反育鵬社で違法採用
沖縄県竹富町が法律に違反し勝手に採択した教科書を使っている問題で、下村博文文部科学相が地方自治法に基づいて是正要求を行った。国が市町村に直接発動するのは初めてのことだ。
いったい何が起きているのか。教科書無償措置法は採択地区内の教育委員会で同一の教科書を採択するよう求めており、沖縄県石垣市・与那国町・竹富町から成る八重山地区の採択協議会は2011年夏に育鵬社の公民教科書を使うことを決めた。
この教科書は改正教育基本法に従い、愛国心や国の主権、領土に関する記述が充実しており、尖閣諸島を抱える八重山地区にふさわしいと評価されたからだ。ところが、左翼勢力はこれが気に入らない。
とりわけ反育鵬社キャンペーンを張っていた地元紙、琉球新報(以下、新報)と沖縄タイムス(同、タイムス)は猛反発し、沖縄県教組(沖教組)や左翼団体とともに「採択やり直し闘争」を始めた。
これに竹富町が呼応し、勝手に不採択を決め、東京書籍の教科書を使用して違法状態を生じさせた。だからこの問題は本をただせば、左がかった地元紙の策動だった。
沖縄での教科書採択はそれまで沖教組(日教組よりも過激左翼の社民党系)が牛耳ってきた。組合教師らが「教科書調査員」となって左翼教科書を採択させるよう教科書を順位付けし、各地の採択協議会を従わせてきた。
八重山地区採択協議会はこの悪弊を一掃し、順位付けを廃止して自主的に採用した。つまり「左翼支配システム」を覆したのだ。それで地元紙が気違いじみた反育鵬社闘争を展開するようになった。
◆ 両紙こそ恫喝・分断
そういう流れの中で、先の石垣市長選でも両紙は革新系候補を利そうとなりふり構わぬ報道を繰り広げた。とりわけ新報は告示日の2月23日付1面トップで「陸自、石垣に2候補地」との見出し記事を掲載し、陸上自衛隊部隊の配備地の選考が最終調整に入ったと報じた(本紙12日付「沖縄のページ」参照)。
市長選では陸自部隊の配備問題が争点になっていたから、誰が見ても革新候補への肩入れだった。これに対して防衛省は「事実に相違した報道」と琉球新報に抗議し、日本新聞協会に対して異例の申し入れ書を送った。
これを本土紙では産経が1面(2月28日付)、朝日が社会面(1日付)で報じたが、当の新報は総合面(1日付)で小さく扱い、それ以降、音沙汰がない。いつもなら「言論弾圧」と騒ぎ立てるところだが、それができないところを見ると、やはり眉唾ものだったのだろう。ちなみに石垣市民は「謀略」に惑わされず、保守系現職が圧勝した。
こういう背景から国の是正要求に対して両紙は火が付いたように騒ぎ立てた。琉球新報15日付は「なぜ竹富だけ」「中立性はどこへ」とベタ白抜きの大見出しを躍らせ、社説では「道理ゆがめる『恫喝』だ 不当な政治介入を撤回せよ」と拳をあげた。沖縄タイムスも「是正要求 八重山を分断」と国を批判した。
盗人猛々(たけだけ)しいとはこのことだ。石垣市と与那国町を「恫喝(どうかつ)」し、それこそ不当な政治介入を続け、反対闘争を仕掛けて八重山を分断したのは両紙のほうだ。
◆違法にとぼける朝日
こうした異様な地元紙に朝日と毎日は同調する。朝日は15日付社会面トップに「教科書選び 国強引」とタイムス(朝日と提携)ばりの見出しで報じた。社説は「両方を使ってみては」とするが、社会面では竹富町の教育長が「育鵬社版は絶対に使わない」と頑(かたく)なに拒絶しており、空しい提言と言うほかない。
おまけに朝日社説は「最後にひとつ、みんなで考えてみたい問題がある。教科書選びが市町村どうし、さらには政府まで出てくるような争いを招くのは、どうしてなんだろう?」と、とぼけたことを言っている。考えるまでもなく違法行為に決まっている。
毎日15日付社説は「(是正要求で)地方の教育行政が独自の判断を回避するような風潮を生むなら、自治理念を根幹とした教育行政を大きく損なう」などとするが、筋違いも甚だしい。教育行政は自治理念ではなく、国の責務を根幹としている。
左翼紙の古びたイデオロギー闘争が今なお闊歩(かっぽ)している。
(増 記代司)