大学生の大麻乱用 正しい知識で「興味本位」防げ


 大学の運動部員による大麻乱用が相次いで発覚した。「興味本位」から軽はずみに手を染める若者が多くなっている昨今の風潮を象徴する不祥事だ。

 学生に対する乱用防止教育が不十分な一方、ネットに溢(あふ)れる誤った情報の影響で、大麻への抵抗感が薄れていることがうかがえる。大学当局は運動部員だけでなく全ての学生を対象に、大麻が危険な薬物であり、その乱用は犯罪行為であることを徹底指導し、再発防止に努めてほしい。

 汚染の低年齢化が進む

 大学野球の伝統校、東海大学は、野球部の複数部員が寮で大麻を使用したことを認めたと発表した。近畿大学サッカー部5人の大麻使用が発覚したばかりだった。両大学とも、部の無期限活動停止を決めた。

 これら学生たちに共通するのは「興味本位」で違法薬物に手を出したことだ。しかし、それは言い訳にならない。軽はずみでも違法行為でありその代償は大きい。仲間からプレーする機会を奪ったのだ。学生たちは猛省すべきである。

大学の運動部は、コロナ禍で活動が長く制限されていた。強豪校の選手ほど、好きなスポーツに打ち込めなければ心に隙が生じやすい。そこに誘惑の魔の手が忍び込んだのかもしれない。「ウィズコロナ」の時代に、大学生を孤立化させないための対策も必要だろう。一方、大麻汚染の低年齢化が指摘される中、学生への乱用防止指導が十分だったのか、大学側の指導についての検証も不可欠である。

 警察庁の発表によると、今年上半期(1~6月)の大麻の検挙人数は2261人。年間での検挙が4321人で過去最高だった昨年同期(2078人)を上回っている。年代別では、人口10万人当たりで30代以上が昨年同期より減少したのに対し、20代以下で増加している。薬物乱用の低年齢化は、社会を長期にわたって蝕(むしば)む深刻な事態だ。大学運動部の不祥事は社会への警鐘として捉えるべきである。

 低年齢化の背景には幾つかの要因が考えられる。一つは「依存性がない」「たばこより害が少ない」などネット上の間違った情報の影響だ。もう一つは、海外で嗜好(しこう)品として大麻を合法化する国・地域があることだ。

 大麻には幻覚作用があり、記憶力にも影響を与える。乱用を続ければ、さらに依存性と危険度の高い覚醒剤などに手を染めることにもなる。

 合法化する国・地域があるのは、健康への害がないからではない。社会への蔓延(まんえん)で取り締まりが難しくなったこと、そして資金が地下組織に流れるという現実があり、合法化はこれ以上、状況を悪化させないための苦肉の策という面があることを忘れてはならない。

 重要性高まる教育の充実

 だが、これらの国・地域を留学や観光で訪れた学生らが大麻を軽く考えるようになる懸念がある。だから、大麻をはじめとした薬物についての正しい知識と危険性を若者に教えることの重要性はこれまで以上に高まっているのだ。大学をはじめとした教育関係者は、これらの現実を踏まえて、乱用防止教育の充実に力を尽くしてほしい。