部活での自信が学習面にプラス 沖縄尚学高校 比嘉公也監督
高校野球・神宮大会優勝の沖縄尚学高校 比嘉公也監督に聞く
昨年11月に神宮球場で開催された「第44回明治神宮野球大会」で、九州地区代表の沖縄尚学学園高校が北信越地区代表の日本文理高校を、8点差をひっくり返す9対8の逆転劇で優勝した。沖縄県勢が同大会で優勝したのは初めて。選手と監督の両方でセンバツ優勝を経験したこともある比嘉公也監督に、高校教師として勉強と部活動の両立について聞いた。(那覇支局・豊田 剛)
授業態度悪ければ使わない 文武両道で精神力磨く

ひが・こうや 沖縄県名護市出身。沖縄尚学高等学校の社会科教諭。1999年の全国選抜高校野球大会(センバツ)で、沖縄尚学のエースとして沖縄県代表として初の全国制覇を達成。愛知学院大卒業後、県庁嘱託職員などを経て2006年沖縄尚学教諭、野球部監督就任1年半後の08年のセンバツで優勝を果たした。13年度は九州大会と明治神宮野球大会で優勝。
――秋の九州大会に優勝し高校野球神宮大会で沖縄県代表として初めて優勝しました。
九州大会と神宮大会は昨年に続いて2年連続の出場だったため、1部の部員は経験済みだったのが1番の強みだったと思います。神宮大会は昨年、初戦で敗退したので、まずは1回戦突破を目標にしました。まず、目の前の戦いに集中し、1戦必勝の積み重ねを目指しました。優勝はまったく想定外のことでした。
――6回までに8-0と大量リードを許していましたが、奇跡的な逆転劇を演じました。
完封負けでは帰れないという思いでした。相手が強力打線であることは分かっていましたが、ほとんどがソロホームランだったのが救いでした。一方で、これからまた何本打たれるかという不安もありました。何とか流れを変えたいと思い、「野球は何があるか分からない。最後まで諦めずに、まず1点を取ろう」と選手にアドバイスしました。
相手の日本文理が2009年夏の中京大中京(愛知)との決勝で、9回に4ー10から1点差まで詰め寄ったゲームを思い出し、「ああいうゲームをしよう」と選手を激励しました。「何とかなる」という他力本願ではなく「何とかしなくてはいけない」という思いでした。私の采配やアドバイスの影響はごくわずかで、選手のあきらめない気持ちが99%です。
――センバツ出場が確実で、必然的に周囲の期待が高まっていると思いますが。
周りの期待が高まっているのは分かっていますが、周りが期待することとチームができることは差があります。選手たちが惑わされないよう言い続けています。
――野球部監督である前に、社会科教師として教壇に立っておられるが、野球部員にはどのような指導をしていますか。
学習と生活態度にはしっかり口出ししています。ややもすると普段の練習がきついからという理由で、授業中、ボーっとしていたり寝ていたりする生徒もいます。眠りたいから寝る、やりたくないからやらない、では精神力が磨かれません。できることをコツコツやれば自ずと精神力が磨かれるという考えで指導しています。
たとえ野球がうまくても、授業中寝ていたり学習態度が悪い生徒は試合には使いません。高校野球はプロ野球とは違います。学校あっての部活動ですし、学校には校則がありますから、好きなことだけやるというのは駄目です。
もうすぐ英語検定があるのですが、センバツがあるからという理由で受けない訳にはいきません。英検があることは昨年4月の段階で分かっていたことです。決められた日程で、自分たちがどのように意識し時間を使うかを考えさせるようにして行きたいと思います。
――沖縄県教育委員会は昨年末、沖縄県の公立学校で学力が低い一因として過度な部活動の実態を指摘しました。勉強と部活動はどのように両立させればいいと思いますか。
野球部員は体育コースですが、沖縄尚学は進学校であり、はじめに部活動ありき、ではありません。体育コースは4時間目が終わると部活動に入りますが、授業の延長戦と位置付けています。成績不良であればグラウンドに連れていきません。また、朝練はチームとしては実施していません。朝練習したから昼間、授業で居眠りする部員は練習に連れていかないように徹底しています。
部活動で得た自信が、学習面でプラスの影響を与えることはあります。部活動で生き生きとやって自信を持たせるのが強みです。長所を活かしながら勉強面とリンクさせていくのが学校の役割ではないでしょうか。野球しかできない「野球バカ」を作ってはいけません。
大学進学を希望する部員が圧倒的に多いので、一定の成績がないと推薦入学できないことを生徒に知らせています。コツコツとした努力が必ず実を結ぶと思います。ラジオで聞いたことのある「知識は荷物にならない」という言葉が心に残っています。





