子宮頸がんワクチン問題 副反応検討部会に抗議相次ぐ


痛みの症例だけで結論

 接種後、様々(さまざま)な症状に苦しむ女性が相次ぐ子宮頸がんワクチンの問題で、厚生労働省ワクチン検討部会が20日に下した結論は、実態を度外視する一方的なものとなった。このため、「多様な症状に苦しむ被害者の病態と被害実態を正しく把握し検討したものとは到底受け止められません」(全国子宮頸癌ワクチン被害者連絡会、以後「連絡会」)など批判の声が上がっている。(山本 彰)

「子供に責任押し付け」と被害者

日消連「殊更に因果関係を否定」

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子宮頸がんワクチンは全く安全で、副反応はすべて注射が原因とした副反応検討部会委員と桃井眞里子部会長(左)

 同ワクチン検討部会は、接種時の痛みと不安が絡み合った症状との結論を下した。だが、これはワクチンとの因果関係を調査した対象群が、疼痛を訴える子供たちに限定されていたためだ。

 ワクチン検討部会が議論したのは、ワクチン接種後に全身の痛みを訴えた97例と、歩行障害などの運動障害を訴えた33例の計130例についてのみ。同検討部会は、昨年6月14日、ワクチン接種の積極勧奨の中止を決定するとともに、ワクチン接種後に疼痛を訴える子供たちだけを調査対象に決定。池田修一信州大学教授らに集中的診断を依頼した。

 その結果発表が、昨年12月25日の検討部会で行われた。今回、その発表を踏まえ、痛みの仕組みについて①神経の異常②ワクチンの薬液による中毒③ワクチンの薬液への異常な免疫反応④心身の反応の四つが原因説として整理され、部会委員に提示された。

 同部会の桃井眞里子座長は、20日の記者会見で、「心身の反応によって惹起(じゃっき)された症状が慢性化したものと考えられるのではないか、との論点に反論がなかった」と経緯を説明。積極的な結論ではなく、4説の中で異論が出なかったというだけのことだ。

 同部会は、痛みの原因が接種によって起こる神経疾患や免疫反応と考えるには、症状が説明できないとして、可能性を否定した。だが、これはワクチンとの関連性を証明するのは難しい、という確認をしたに過ぎない。

 今回、調査対象となったグループから、ワクチン接種後、自己免疫疾患を患ったケースは最初から除外されている。

 平成23年8月、子宮頸がんワクチンを接種した福島市に住む高2生(16)は、接種から4日後、具合が悪くなり、自宅で一旦(いったん)、寝たきり状態になった。

 小学校、中学校と病気らしい病気もせず、剣道などスポーツに打ち込んできただけに、両親は多少、娘の調子が悪くても気にすることなく、2回目(同9月)、3回目(平成24年4月)と接種させてきた。3回目が終わった6月初旬、高熱と全身に力が入らなくなり大学病院で同月20日、自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)という難病の診断が下った。

 接種勧奨中止後、厚生労働省から、両親に診断書提供の依頼があったが、その後、何の連絡もない。父親のAさんは、「昨年6月、痛みの症例だけに限定して調査を開始した時から、ちょっとおかしいと感じた」とし、「この結論は、被害者の心身が悪いとして、接種を受けた側に責任を押し付けるもの」と憤りを隠さない。

 日本消費者連盟は、桃井眞里子ワクチン分科会副反応検討部会長へ抗議文を発表。同部会が、医学的に局所の痛みは通常2週間以内に治まるとし、接種後、1カ月以上経(た)ってから発症している場合は、接種との因果関係を認めるのは困難としている点に対して、「殊更に、因果関係を否定することに執心している」と疑問を呈している。

 そのうえで、「このような検討のあり方は、そもそもワクチンの副作用ではないかとの疑念を意図的に排除し、副作用かどうか真摯(しんし)に検討しようとする姿勢が全く感じられないものです。これをもって、医学的見地からの説明というのであれば、貴合同会議の検証は到底国民の信頼を得られるものではありません」と非難している。

 接種の積極的再開の可否が、12月25日の部会で決定されるとみられていた。このため、「連絡会」は、記者会見を準備していたが肩すかしを食らった形となった。

 今回の部会は、午後6時から8時の時間帯で開かれ、12月の部会より2時間遅いペースだったが、厚労省と同部会は記者会見を実施。記者会見を準備しなかった「連絡会」を出し抜くかのように結論を発表した。

 同部会の結論は、子宮頸がんワクチンの薬液には副反応リスクは全くなく、注射の痛みに対する恐怖で症状が出ているというもの。だが「どんなワクチンでも、副反応がある」というのが常識だ。

 実態から懸け離れ、同ワクチンに副反応なしと強弁する見解は、却って、不可解であり、早晩、ほころびが出るものと見られる。