一斉休校 “やる気スイッチ”を探す時
新型コロナウイルス対策で小中高校の一斉休校が行われ、民間の教育事業者などがインターネット上で学習教材やスポーツ指導、電子書籍などを無料や低価格で提供している。スマートフォンやパソコンの使用時間などのルールを家族で話し合い、これを守るという前提条件付きであれば、ネット上の教材活用は歓迎したい事象である。
保護者叱責はやる気削ぐ
学校から配布された宿題や学習帳では、すぐに厭(あ)きてマンネリ化してしまい、やる気が起きないというケースも聞く。小学館集英社プロダクションは3月末までの期間限定で、ウェブで「まなびwith」(ウィズ)の教材を小学生に無料提供。1年間の総復習もできる。内田洋行やソフトバンク、文部科学省などもサイトを公開していることは、保護者にはありがたい。
だが、このような教材が提供されても、時間を持て余す子供たちはだらだらとした生活になってしまいがちだ。こうした子供の姿に「勉強しなさい!」「なんでやらないの!」「お兄ちゃんはやってたのに!」など保護者がイライラして子供を叱ってしまうのは分からなくはない。
「その言葉、ちょっと待った!」と苦言を呈しているのは、東大合格者数日本一を誇る開成中学校・高等学校校長を務める柳沢幸雄氏だ。保護者は子供より20~30年人生経験が長いので「やるなら、今でしょ!」「今やらなければ、後からだと取り返しがつかない」ということが体験上分かるだけに、何かと口やかましく子供に接し、親の目標・考え方を押し付けてしまうケースも多い。
ここで「ちょっと、自分の子供時代を振り返ってほしい」と柳沢氏は著書や講演で語る。「親から口やかましく勉強しろと尻をたたかれ、どういう気持ちだったか? やる気を出して頑張れましたか?」と保護者に問い掛ける。振り返ってみると、やる気が削(そ)がれ、口答えして反発していたのではないか? それならば、どうして子供にやる気を削ぐ言葉を掛けるのか?
保護者は、自分の親と同じ行動に出てしまう傾向にある。保護者が親から刷り込まれた「教育論」で期待したり、世間体を気にしたりして子供に要求してしまっている。
どうすれば子供の“やる気スイッチ”が入るのか。子供の特性、好きなこと、得意なことをしっかり把握し、それと関連付けて適切な指導をしながら、褒めて学ぶことが肝要だ。また、この時期だからできる家庭での「お手伝い」を通して、勤労・労働の大切さを教え、褒められて感じる自己承認欲求を育む良い機会でもある。
褒め過ぎず、叱り過ぎず
保護者は子供との会話の7~9割で「やったこと、頑張ったこと」を褒め、1~3の割合で「叱ったり、これからの課題を与えること」が理想だと柳沢氏は指摘する。甘やかし過ぎず、叱り過ぎない子育て。保護者にとっては非常に難しい“我慢”の選択だろうが、新型コロナウイルスによる休校を、子供の“やる気スイッチ”は何なのか、子供をよく観察し、子供から学ぶためのよい機会だと捉えてはどうだろうか。