アフガン撤収は過激派の勝利

アメリカ保守論壇 M・ティーセン

テロ組織は依然存在
議会の圧倒的多数が反対

マーク・ティーセン

 

 「偉大な国は終わりのない戦争はしない」。トランプ大統領は一般教書演説でこう断言した。オバマ大統領でも同じようなことを言ったかもしれない。2015年のオバマ氏の「終わりのない戦争を支持しない」という言葉は記憶に新しい。

◇戦争の「終わり」

 トランプ氏の演説の数日前、上院の与党・共和党は、シリアとアフガニスタンからの撤収に反対する法案を68対23という圧倒的多数の支持を得て通過させ、トランプ氏の撤収要求にくぎを刺した。トランプ氏の支持者らは、「終わりのない戦争」を支持しているのは外交エスタブリッシュメントだけだと主張する。これらの戦争はいつ終わるのか、いつ勝利を宣言し、帰国できるのかと問い掛ける。

 もっともな疑問であり、きちんとした答えをすべきだ。

 これまでの戦争では、何をもって勝利とするかを決めることは容易だった。敵が降伏し、武器を置いた時が勝利の時だった。しかし、この戦争は、これまでの戦争とは違う。国境があり、陸海空軍を持つ国家が相手ではない。過激なイスラム主義テロリストとの戦いであり、ウサマ・ビンラディンはこの戦いを「不信心者とイスラムとの宿命の戦い」と呼んだ。戦艦ミズーリ上での調印式はない。武器を置くことはない。この戦争での米国にとっての勝利とは、米国の領土がテロ攻撃を受けずに一日を送ることだ。この日々の勝利は、米兵が遠く離れた地で敵を追っているからこそ得られるものだ。

 米国の敵が持つ勝利の定義ははっきりしている。米国が先にあきらめた時が、勝利だ。米国に対して実際にそう言ったのだから間違いない。9・11同時多発テロの黒幕、ハリド・シーク・ムハンマドは、中央情報局(CIA)の尋問官に「われわれには米国を軍事的に負かす必要がないことを米国は分かっていない。米国が戦いをやめることで自滅するまで戦い続けられれば十分だ」と話した。テロリストらは、11年のオバマ氏のイラク撤収も、トランプ氏のシリアとアフガンからの撤収計画もそのような視点で見ている。米国は戦いをやめることで敗北しようとしている。

◇同時テロから17年

 9・11から17年が過ぎ、戦争を早く終わらせたいと思うのは分かる。しかし、それとこれとは別の話だ。米国が、戦争は終わったと一方的に決めることはできない。敵にも決定権はある。こちらが戦いに疲れたからといって、敵もそうであるということにはならない。

 これは厳然とした事実だ。米国は、この戦争を終わらせる時を選ぶことはできない。しかし、戦う場所は選べる。シリアの砂漠とアフガンの山岳地帯で戦うか、01年9月11日のように米国内の街で戦うかだ。どちらにするかは米国次第だ。

 トランプ氏が、テロリストとの戦いに本気で取り組んだことは称賛に値する。一般教書演説で「就任した時、ISIS(「イスラム国」、IS)はイラクとシリアの2万平方マイル(約5万2000平方メートル)以上を支配していた。現在、その支配地のほぼすべてを、この血に飢えた怪物の手から解放した」と宣言した。確かにそうだ。

 しかし、ISは滅びていない。依然、武装した何万人もの戦闘員がいる。シンクタンク「戦争研究所」の推測によると、イラクから4億ドルもの資金をひそかに運び出し、これらの資金は、世界中で活動と攻撃計画に使用される可能性がある。

 アフガンについて米情報機関は、アルカイダ、IS系「イスラム国ホラサン」(IS―K)など約20のテロ組織があり、米国が撤収すればすぐに安住の地を手に入れ、そこから、新たな攻撃を計画するようになると見ている。米紙ニューヨーク・タイムズは1月28日、17年に作成され、昨年更新された報告で情報機関が「アフガンから米軍が完全撤収すれば、2年以内に米国が攻撃を受ける」と指摘したと報じた。

 米国は現在、テロ組織の首根っこを踏み付けている。テロ組織は生き残ることに必死で、遠く離れた地を攻撃することはできない。しかし、それがなくなれば、テロリストらは立ち上がり、体のほこりを払い、再組織化され、再建され、米国内で米国人を殺すために戻ってくる。

◇勝つまで戦う

 演説の中でトランプ氏は、ノルマンディー上陸作戦を実行した英雄らを称(たた)え、「生き残れるかどうかも、年を重ねていけるのかも分からなかった。しかし、米国が勝たなければならないことは分かっていた」と述べた。

 それは現在も変わらない。偉大な国は、勝つまで戦いをやめることはない。

(2月8日)