中国通信大手への制裁緩和 政府、議会から懸念の声
トランプ米大統領が、中国政府系の通信機器大手、中興通訊(ZTE)への制裁緩和を商務省に指示したことが、安全保障への懸念から波紋を呼んでいる。トランプ氏は13日、ツイッターで制裁緩和の意向を表明。中国政府からは解除へ圧力がかかっている。
アレックス・ワン国務次官補(東アジア担当)は15日の上院外交委員会アジア小委員会の公聴会で、トランプ氏が制裁の見直しを商務省に指示したことを明らかにした。
ZTEは2017年3月に、米輸出法に抵触していた問題で和解し、11億9000万㌦の罰金を支払っている。また今年4月には、輸出法違反への対応を怠ったとして、米企業のZTEへの部品供給が7年間禁止された。
ZTEは140カ国に機器を輸出、昨年の収益は170億㌦だが、先週、米国の制裁によって活動を縮小せざるを得なくなったと発表していた。
トランプ氏は12日、ツイッターに「ZTEが早急に立ち直れるよう習近平国家主席と協力している。中国で多くの雇用が失われた。対処するよう商務省に指示した」と投稿。
これに驚いた米国の貿易、安全保障高官らの働き掛けを受けてトランプ氏はその後、ZTEは米企業から大量の部品を買い入れており、ZTEをめぐる譲歩は、「中国との貿易交渉全体の一部であり、習主席との個人的な人間関係」に基づいたものだとツイートした。
下院情報委員会の12年の報告は、ZTEと、中国通信大手の華為技術(ファーウェイ)両社が、「国家安全保障への脅威」を理由に米企業との統合、買収を禁止するよう求めている。両社は、中国共産党の影響下にあり、米通信インフラを破壊する活動に利用される可能性があるからだ。
国防総省は、情報流出の懸念から、軍で中国製の通信機器を使用することを禁止したばかりだ。
サイバーセキュリティー企業クリプトワイヤは16年に、中国製スマートフォンにユーザーの情報を中国に送信するソフトウエアが搭載されていることを明らかにした。このソフトは、アンドロイドスマホで発見され、シャンハイADUPSテクノロジーが製造、7億台以上のスマホ、自動車などスマートデバイスに搭載されている。
連邦政府のスパイ対策機関、国家安全保障防諜(ぼうちょう)センターのエバニナ局長は15日の上院公聴会で、サイバースパイの懸念があり、政府、民間での使用は勧められないと訴えた。
制裁緩和への動きは、中国による不公正な貿易慣行と米技術の流出に対する米政府の厳しい対応に水を差すと、共和、民主両党から非難を受けている。
共和党のルビオ上院議員は、FOXニュースで「ZTEに対する法的な対応は、貿易問題ではない。同社への罰則は、北朝鮮を支援し、イランの制裁回避を手助けしたからだ」とZTEへの制裁緩和を非難、中国は米国の技術を盗み出すことで利益を得ていると主張した。
民主党議員らも、ZTEへの制裁で中国の圧力に屈しているとトランプ氏を非難した。