中国軍、米石油企業システムに侵入

USTRが大物ハッカー名指し

ビル・ガーツ

 米通商代表部(USTR)は中国政府の不公正な貿易慣行に関する最新の報告で、人民解放軍(PLA)の将官が、米石油・ガス企業などに対するサイバースパイ活動を指揮していたことを初めて明らかにした。 スパイ活動を指揮していたのは、最近まで人民解放軍総参謀部第3部(3PLA)の部長だったPLAの劉暁北少将。劉氏は、国営企業の中国海洋石油(CNOOC)と交渉中の米企業に対するサイバースパイ活動を指揮したという。米政府が中国軍の大物ハッカーを名指しするのは初めてのこと。今後、米国の制裁の対象となる可能性がある。

 この調査報告を基にトランプ政権は、中国製品に関税を課し、中国企業による投資を制限する見通しだ。

 報告によると、CNOOCは3PLAに、最先端のシェールガス生産技術を持つ複数の米石油・ガス企業に対するスパイ活動を命じたという。報告は、3PLAのハッキングを受けた米企業に関する二つの事例について説明している。

 このうちの一つの事例で中国軍ハッカーは、米企業のネットワークに侵入し、CNOOCとの交渉計画に関する情報を盗み出したという。

 報告では米企業名は伏せられ、「CNOOCが米企業『1』との交渉が最終的に成功したのは、CNOOCが情報機関から受け取った情報のおかげだ」と指摘している。

 CNOOCは、二つ目の事例である米石油・ガス企業5社へのスパイ活動でも3PLAを動員し、業務、資産管理、幹部の行動、シェールガス技術、フラッキング(水圧破砕法)技術に関連する情報を収集させた。

 報告は「これらの事例は、中国が情報機関を使って、いかに、自国の国営企業の商業的利益のために、外国の協力相手や競争相手に不利益をもたらしているかを示している」と指摘している。

 米情報機関は、中国軍のサイバー部隊3PLAは、10年以上にわたる米国の政府、軍、民間部門へのサイバー攻撃とデータ流出に関与してきたとしている。

 劉氏の現在の地位は不明だが、3PLAは、戦略支援部として知られる新たな組織の中核をなしている。戦略支援部の主要部分はサイバー部隊と呼ばれ、偽情報と印象操作といった情報戦を行うPLAの心理戦部隊「311基地」を吸収して組織された。

 サイバー部隊は、北京市海淀区に本部を持ち、10万人のハッカー、言語専門家、アナリストらを擁しているとみられている。上海、三亜、成都、広州に支部を持つ。