台湾旅行法 米、台湾との関係強化へ

ビル・ガーツ

 米国で、台湾との高官往来の法的裏付けとなる台湾旅行法が成立した。「一つの中国」を掲げる中国は強く反発、報復の可能性を示唆しているが、米国の中国問題専門家らは、民主主義体制の台湾を共産党一党支配体制に取り込もうとしている中国に対抗する前向きな一歩だと評価した。

 旅行法は、中国への刺激を恐れ、台湾との政府、軍の交流を制限してきた歴代政権の政策を転換するもの。米政府は、1979年の台湾関係法をもとに、米台間の高官の往来を規制し、「一つの中国」政策を支持してきた。

 元海軍太平洋艦隊情報部長のファネル退役海軍大佐は、旅行法成立を受けて「(中国人民解放軍と)米国の同盟国に、インド・太平洋への米国の関与が、法律の上だけではないことをはっきりさせる」ために台湾軍との交流を拡大すべきだと主張。将官を派遣して軍事演習を視察させるとともに、太平洋軍から連絡将校を送って台湾に駐留させるべきだと訴えた。

 また、軍事交流を確立した上で、米国の艦艇や航空機が通常の活動の中で台湾海峡を通過できるようにし、中国を牽制(けんせい)すべきだと主張した。

 一方、国際評価戦略センターのリチャード・フィッシャー上級研究員は、国務省によって長年、台湾に課せられてきた往来の制限を見直すべきだと主張、「これらの制限は、中国共産党に取り入るために台湾との関係を『封じ込める』目的で、国務省高官の裁量だけで実施されてきた」と歴代政権の対応を非難した。

 元国務省高官のジョン・ケイシック氏も、「20年間にわたって拡大してきた中国の戦略的脅威への対処を怠ってきた」と国務省を非難した。「トランプ大統領は、台湾旅行法をてこに、北朝鮮との交渉で中国に建設的な役割を果たさせ、米国民に中国がアジア太平洋地域の平和と安定に大きな脅威であることを知らせようとしている」と指摘、トランプ氏は同法が「中国に対する重要なシグナル」になると考えていると述べた。

 トランプ氏は就任直後に、台湾の蔡英文総統と電話会談し、中国の反発を招いた。また、北朝鮮問題では、中国の協力に繰り返し期待を表明してきた。しかし、昨年12月に発表した「国家安全保障戦略」で中国、ロシアを「競合勢力」と位置付け、今月には中国を主な標的とする鉄鋼、アルミの輸入制限を決定、知的財産権侵害に対する制裁も発表する予定だ。