高まる宇宙戦争の脅威
中国が衛星攻撃ミサイル試射
中国は2月初め、新型の人工衛星攻撃ミサイル「DN3」の4回目の試験発射を行った。中国は防衛のための迎撃ミサイルと主張してきたが、米国は人工衛星に直接体当たりさせる直接上昇方式の衛星攻撃ミサイルで、ほとんどの米国の衛星を破壊可能だと警戒している。
試射8日後の米上院公聴会で公開された情報によると、中国は衛星攻撃兵器(ASAT)の試験・開発を進める一方で、まもなく衛星攻撃と宇宙戦争を専門とする部隊を設ける。
コーツ国家情報長官は情報機関幹部らも参加した公聴会で、中国のASATは「今後数年で初期運用能力を獲得するとみられる」と、開発が最終段階に入っている可能性を指摘した。
米情報機関がASATの脅威に公式の場で発言するのは初めてのこと。ASATには、DN3のような直接上昇方式の衛星攻撃ミサイル、レーザーや電子的手段で衛星の運用を妨害する機器、軌道上の衛星を補足したり、破壊したりできる操縦可能な小型衛星などがある。
宇宙戦の専門家でもあるハイテン戦略軍司令官は昨年、米国の衛星は攻撃に対して無防備で、中露からの攻撃を受ける可能性が急速に高まっていると指摘。米国の衛星は優秀だが古く、「紛争という環境に対応するようにはつくられていない」と、迅速な対応の必要性を訴えた。
コーツ長官は証言の中で、中国が目指しているのは「米国と同盟国の軍事的有効性を削ぐ」ことだと指摘、「中国人民解放軍は部隊を設け、地上発射ASATミサイルなど開発を進めてきた宇宙戦能力の初期運用訓練を開始した」と、実戦能力の獲得が近づいていることを強調した。
中国軍事問題専門家リック・フィッシャー氏は、コーツ氏の証言で、中国が宇宙戦、衛星攻撃ミッションの訓練を行う部隊を設置したことが初めて公式に確認されたと指摘。その一方で「米軍には正式な宇宙戦部隊はない」と、米国の対応が遅れていることを強調した。
フィッシャー氏は、中国が宇宙ステーションに兵器を配備する可能性についても言及。2030年代前半には中国軍の宇宙開発計画は月に達し、「軍民共用可能な設備が設置されることもあり得る」と警鐘を鳴らす。
昨年12月に公表された米政府の国家安全保障戦略は、宇宙での自由な活動は米国にとって「重大な利益」と指摘、米国の衛星が攻撃を受ければ戦う用意があることを明確にしている。
これまで米国では、宇宙兵器の配備が公に議論されたり、公開されたりしたことはない。08年に改造した迎撃ミサイルSM3が、低軌道から落下する米国家偵察局の衛星を破壊するために使用され、ある程度の衛星破壊能力を備えていることが明らかになっている。