米、中国の知財侵害調査を開始

ビル・ガーツ

 トランプ米大統領が、米国の知的財産への中国による大規模な侵害の調査を公式に開始することを決めたことは、長年、中国の組織的なサイバースパイ攻撃を受けてきた米企業にとって朗報だ。米通商代表部(USTR)は先月、トランプ大統領からの指示を受けて、通商法301条に基づく調査を正式に開始した。

 USTRによると、調査は8月18日に開始され、「技術移転、知的財産、技術革新をめぐる中国の法律、政策、慣行が違法かどうかを判断する」。

 調査は、中国に対する制裁阻止を求めてきたトランプ政権内外の親中派にとっては逆風だ。中国政府は、調査の結果、対中制裁ということになれば、貿易戦争になると強く反発している。

 米政府筋によると、トランプ氏は6月、アップル、アマゾン、マイクロソフト、グーグルなどシリコンバレーに拠点を持つIT企業の幹部と会見。企業幹部らは一様に、中国によって損失を被り、企業秘密、技術が奪われていると主張、4兆㌦以上の知的財産が中国に奪われたとして、政府に対応を求めた。

 大統領の指示書によると、中国は、米国の技術情報、知的財産の中国企業への移転を求める政策、慣行を実施してきた。中国政府による不透明な承認手続き、合弁事業の条件、外国資本への制限、調達なども調査対象となる。

 中国政府当局者らはさらに、あいまいな規則を悪用して、外国企業に選択的に圧力をかけて専有技術を提供させている。中国政府はまた、技術移転を狙って、組織的に米企業の買収を行っている。

 調査では、「中国政府が、米国の民間のコンピューターネットワークへの不正侵入を実施、支援していないか、サイバー攻撃で知的財産、企業秘密を盗み出していないか、この行動によって米企業が損失を受け、中国の企業と民間部門が競争上の優位に立っていないか」についても判断する。

 中国の習近平国家主席はオバマ大統領(当時)との会談で、サイバー攻撃による企業スパイの停止を約束した。この合意は鳴り物入りで交わされたが、米情報当局者らによると中国は依然、活発にサイバースパイ活動を行っている。