米韓演習の中止を要求

外交・安全保障対話で中国

ビル・ガーツ

 中国は21日に行われた米中閣僚級による外交・安全保障対話の初会合で、北朝鮮の核と長距離ミサイルの実験の停止と引き換えに、米韓が軍事演習を中止する「双停」を提案したが、米側は、これまでにも試みられた方法だが、北朝鮮に核放棄を決意させるには至っていないと拒否した。米当局者が明らかにした。

 中国外務省の耿爽報道官は北京での会見で「中国は『停止のための停止』構想を提示した。不拡散と平和交渉の推進への取り組みを強化するためのものだ」と語り、中国が北の核・ミサイル開発問題に真剣に取り組んでいるとアピールした。

 米軍は韓国に2万3000人を駐留させ、毎年2度の大規模演習「フォール・イーグル」と「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」を行っている。演習は、両国軍が北朝鮮との紛争に短時間で対処できるようにするために必要だ。

 双停案は3月に中国の王毅外相が初めて提示し、今月に入ってシンガポールで行われた「アジア安全保障会議」(シャングリラ会合)でも中国人民解放軍の将校らが提唱した。この会議にはマティス米国防長官も参加した。

 だが、この提案は、中国が北朝鮮問題で中立な立場にあると印象付けるためのものと批判されている。中国が依然、北朝鮮と軍、経済、政治で深い関係にあることは明らかだ。

 中国問題専門家のジョン・タシク氏は「中国は米韓の軍事協力によって、韓国への戦略的影響力が弱められていると考えている。双停が実施されても、中国は何も失う物はない」と、双停が米韓の軍事協力を停止させるための中国の巧妙な策略だと訴えた。

 また同氏は、トランプ氏の交渉手腕で中国と合意を交わせるかどうかはまだ分からないとする一方で、「米国は北朝鮮に核開発計画を思いとどまらせるために、1991年に朝鮮半島から核兵器を撤去した。レーガン大統領が生きていれば、核兵器を再配備し、強い立場から『相互の、恒久的で、検証可能な、不可逆な非核化』交渉を提示するはずだ」と語り、核の再配備を提示することで、双停案に対抗すべきだと訴えた。

 元海軍太平洋艦隊情報部長のファネル退役海軍大佐は、「北朝鮮戦略で譲歩すれば、朝鮮半島から米軍を排除したい中国政府の戦略的目標を後押しすることになる。これは同盟国の韓国と日本を危険にさらすだけでなく、米国に対する北朝鮮の脅威への対応にもならない」と語り、米韓演習中止の提案を拒否すべきだと訴えた。