中国向けラジオ放送 トランプ政権、予算削減へ

ビル・ガーツ

 トランプ政権は、米政府系放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)の予算に大なたを振るい、中国向けのラジオ放送を縮小しようとしている。ワシントンのRFA本部の発表を受けて、連邦議会議員らから強い反対の声が上がった。

 RFAを監督する放送理事会(BBG)がニュースサイト「ワシントン・フリー・ビーコン」に明らかにしたところによると、RFA標準中国語放送の予算は今年度の4000万㌦から2018年度は3500万㌦に削減される見込みだ。RFAによると、削減はトランプ大統領の連邦予算削減の一環であり、「今後も、最も費用対効果の高いソーシャルメディアを通じて、中国に注力していく」という。

 BBGの予算を監督する下院外交委員会のロイス委員長は、「中国政府のファイアウォールが、RFAやVOA(ボイス・オブ・アメリカ)のサイトをブロックしている限り、標準中国語のラジオ放送は続けるべきであり、経費を削減するのならBBGはむしろ、肥大化したワシントンの官僚組織を縮小すべきだ」と訴えた。

 情報専門家らも標準中国語ラジオ放送の縮小に批判的だ。

 元海軍太平洋艦隊情報部長のファネル退役海軍大佐は、「米国民は毎日のように、中華日報、人民日報、新華社通信など国有メディアからのプロパガンダにさらされている」と指摘、「今後も中国の戦略的プロパガンダに対抗するには、RFAのような手段で中国国民に情報を確実に伝えることが必要だ。これはインターネットではできない」と中国語放送の継続の重要性を訴えた。

 安全保障政策センターの上級研究員で情報活動専門家のマイケル・ウォラー氏は、検閲によるメディアや情報伝達手段への共産党の管理に手を貸すことになると予算削減を非難、「放送を縮小して、ソーシャルメディアに移行すれば、検閲はさらに効果的になる」と主張した。

 中国は、すべてのソーシャルメディアを厳しく管理し、インサイド・チャイナ、フェイスブック、ツイッター、ユーチューブは遮断されている。一方で、数千万人のユーザーを持つ中国版ツイッター、微信、微博からは、RFAのコンテンツは締め出されている。

 RFAの予算削減は、中国による脅威よりも、北朝鮮からの脅威に集中的に対応したいトランプ政権の政策の一環とみられるが、国務省の元中国専門家、ジョン・ケイシック氏は、RFAは「中国の人々にとって唯一の最も信頼できる、正確で包括的な情報源だ」と予算削減に対し否定的な見方を表明した。

 中国とロシアは、米国の権益や同盟国に対して、国営放送やプロパガンダを通じたソフトパワーによる活動を強化している。RFAは、アジアでの民主主義と自由の促進のために活動しており、ビルマ語、広東語、クメール語、韓国語、ラオス語、標準中国語、チベット語、ウイグル語、ベトナム語でラジオ、衛星放送を行っている。