あと5分で着くから
地球だより
ロシア人の友人や知人と待ち合わせをする。必ずといっていいほど時間通りには来ない。時間が過ぎた後に電話をくれるケースもあるが、定番のセリフは「あと5分で着くから」である。
でも彼らが、5分でやってきた試しはない。実際に姿を現すのは、電話から2、30分後。ちなみに「遅れてすまない」と謝る人もいない。念のため尋ねてみたことがあるのだが、彼らは電話から5分後に到着したと本当に思っている。
ロシア人の中では、時間の流れが時計の針の動きと違うのか?日本人男性と結婚して、日本暮らしが長くなった旧友のターニャに会った。久しぶりに一時帰国した彼女も、待ち合わせに遅れてくる友人たちに呆れている。ちょうどいいので、疑問をぶつけてみた。
「そうよね。日本では考えられないわね。彼らは昔のまま。自分を守るために平気で5分と嘘をつくの。その癖は子供の頃から。皆、怒られるのが怖いからそうするの」
子供が「あと5分」と言うからには、誰かが「あと5分」と言い訳するのをまねしてのことだろう。それは親か、周りの年長者か。とにかくそうやって「あと5分」はロシアの社会で受け継がれてきて、自然と口から出る言葉になったのだろう。ということは、「5分」という時間の単位には、あまり意味がないのかもしれない。
間違いなく確かなことは、平気で遅れてくる人たちを嫌っていたら、ロシアではほとんど友人がいなくなってしまうということ。それも困る。
(N)