珍しい自治体の合併ースペインから


地球だより

スペイン

 スペイン西部にあるエストレマドゥーラ州の「ドン・ベニト」と「ビジャヌエバ・デ・セレナ」の合併が、住民投票を経て決定した。

 スペインには日本の市町村のような行政区分はなく、全て「ムニシピオ」(市町村の集名)で統一されており、首都マドリードも、人口100人程度の集落も、同じ呼称となる。この合併により人口約6万4000人の新たな自治体が誕生するが、比較的人口の少ない同州では3番目の大きさとなる。

 両自治体にとってはさまざまなメリットが生じるが、合併が促進されない最大の理由は政治的な障害である。常識的に考えても、自治体の首長は2人から1人に、議員の数も半減するのは確実であり、保身に走る政治家の多い昨今、自ら不利になる愚を犯してまで、虎穴に入ろうとする者は少ない。

 現在、スペインには8131カ所の「ムニシピオ」が存在する。日本の1718市町村と比べれば、いかに合併が促進されていないかの証左ともいえよう。

 同州は、日本にとってなじみが薄いが、世界に目を向けると、コロンブスの新大陸発見後、「コンキスタドール」と呼ばれる多くの征服者を輩出している開拓精神の旺盛(おうせい)な地方として知られている。

 インカ帝国を征服したピサロやアステカ王国を滅ぼしたコルテスもこの地方の出身である。前者、後者の生誕地「トゥルヒージョ」や「メデジン」も、新たに誕生した「ムニシピオ」とは指呼の間にある。(T)