中国 米大統領選に干渉か
国家情報長官 正確な情報伝えられず
米国の情報機関を統括する国家情報長官のジョン・ラトクリフ氏は、政権交代に伴う退任直前の7日、情報機関の分析官らが昨年11月3日の大統領選への中国の干渉を過小評価し、政治判断に影響を及ぼしていると非難する報告を公表、波紋を呼んでいる。
ラトクリフ氏は「中国に関する政府の重要な情報をすべてまとめる立場にある者として、(情報機関の)分析官らによる評価のほとんどは、2020年大統領選で中国政府がどの程度の影響を及ぼしたかを正確に反映していないと考える」と指摘した。さらに、これは「分析官らに不当な圧力が掛けられた」結果だと主張し、中国政府が大統領選に影響力を行使した可能性があるものの、正確な情報が伝えられていないとの見方を明らかにした。
この指摘は、情報長官室の監察官バリー・ザローフ氏の報告を受けたもの。ザローフ氏は議会に提出した報告で、中国の活動に関して欠陥のある分析が数多くある一方で、ロシアによる干渉が強調されていると指摘。その根底には、トランプ大統領(当時)に対する分析官らの偏見があると結論付けている。
ザローフ氏はまた、「中国問題分析官らは、中国の活動を不当な影響力行使、干渉として評価することをためらっているようだ」と指摘した。
一方、ロシア問題の分析官らは、ロシア政府による干渉の明確な証拠を議会での報告やプレゼンテーションの中で指摘している。
ラトクリフ氏によると、CIA分析官らは、情報長官室配下の国家情報会議(NIC)分析官の指摘を拒否しており、両者が対立していることも関係しているという。
また、CIAの責任者らが分析官らに圧力を掛け、中国による選挙干渉に関してCIAとは異なる分析を「支持しないよう」求めていると、ラトクリフ氏は指摘している。NICの分析官らも、この主張を支持しているという。
2000年10月のコラムで記者(ビル・ガーツ)は、CIAの情報分析部門内の親中派が中国政府の脅威を過小評価する報告を行っていると指摘した。
CIA高官らはこれに反発、当時のテネット長官は「傑出した分析の健全性を損ねる」と非難した。
数カ月後、陸軍退役大将ジョン・ティレリ氏率いる外部専門家らの委員会が、CIAの分析官らは中国をひいき目に見る組織的な傾向があるとする報告を作成した。
この報告は依然として公開されていない。
ビル・ガーツ氏
米紙ワシントン・タイムズ(WT)の国防担当記者として、これまでにスクープ記事を多数執筆。2019年11月まで米保守系ニュースサイト、ワシントン・フリー・ビーコンの上級エディター。著書に『Deceiving the Sky(空を欺く)-地球的覇権狙う共産中国、活動の内幕』(Encounter Books)、『誰がテポドン開発を許したか』(文藝春秋社刊)など