米国防政策委 対中融和に傾斜
政権の強硬策反映せず
米政府元高官らから構成される国防総省の有力諮問機関、国防政策委員会(DPB)は、トランプ政権が推進する対中強硬策を反映していないとアナリストらが指摘している。その中でも特に政権と対照的な考えを持つのは、キッシンジャー元国務長官(97)だ。
トランプ政権は、中国を米国の戦略的競合国と見なし、過去の政権の融和策を拒否してきた。キッシンジャー氏は対中融和策の立案者であり、中国との経済的、外交的関与の強化を主張してきた。
キッシンジャー氏は、直近2回の委員会には参加していないが、国防幹部など政権内での影響力は依然、強いとみられている。
上院外交委員会の元共和党顧問ウィリアム・トリプレット氏は、委員の少なくとも3分の2は、現政権の方針を支持し、過去の政権を支持する委員は3分の1にすべきだと主張。「さらにこの3分の1は、著名人であり、強い党派性を持っていないことで知られる人物であるべきだ」と強調した。
その上で「現在の構成は、この基準を満たしていない。キッシンジャー氏が中国に関する自身の考えを持つ権利はあるが、この人々は、トランプ政権と反対の考えを持つ」と懸念を表明した。
デービッド・マコーマック委員は、ヘッジファンド会社「ブリッドウォーター・アソシエート」のCEOで、同社は中国とさまざまな面でつながりがある。
オルブライト元国務長官は、クリントン政権で、中国政府の改革の約束をもとに中国の世界貿易機関(WTO)加盟を推進したが、その約束が守られることはなかった。
クリントン政権で司法副長官だった民主党のジャミー・ゴーリック氏は、情報機関と法執行機関との間に官僚的な「壁」を設けたことで知られる。この壁によって、連邦機関が情報を共有できなくなり、2001年の同時多発テロを招いたとされている。
クリントン政権で国防副長官だったルディー・デレオン氏、16年の大統領選でヒラリー・クリントン陣営に加わっていたジェーン・ハーマン元下院議員も委員に名を連ねる。
ゲーリー・ラグヘッド元海軍大将やオルブライト氏、ゴーリック氏、ハーマン氏はオバマ政権時の11年に、委員会の構成を民主党寄りに変える取り組みの一環として委員会に加わった。
保守派の委員としては、ブッシュ(子)政権のジャック・クラウチ元大統領次席補佐官、ポーラ・ドブリアンスキー元国務次官、ロバート・ジョセフ元国務次官、穏健共和党員としては、エリック・カンター元下院院内総務、ジム・タレント元上院議員らがいる。
米太平洋艦隊で情報部門トップを務めたジム・ファネル元大佐は、「現在の委員会は著名人で構成されているが、一部の例外を除いて、全体の構成は基本的に『関与政策』支持を示している。この政策の下でこの10年間、アジアでの中国による軍事的、攻撃的勢力拡張が軽視され、時には支援を受けてきた」と述べた。