ふるさと納税、より良い制度の構築に努めよ


 総務省がふるさと納税の新制度から大阪府泉佐野市を除外したことをめぐり、国の第三者機関「国地方係争処理委員会」が、判断を再検討するよう総務相に勧告することを決めた。

 勧告に強制力はないが、「不指定は適法」としてきた総務省の主張はほぼ退けられた。

除外再検討の勧告決定

 2008年開始のふるさと納税は、故郷や応援したい自治体に寄付すると、寄付額に応じて居住地に納める住民税や所得税の控除を受けられる制度だ。地方の自治体の税収が増えれば、地域振興にもつながるだろう。

 ところが、一部の自治体が多額の寄付を集めようと、高額過ぎたり、地域と関係がなかったりする返礼品を贈り、制度の趣旨をゆがめていると問題視された。これを受け、改正地方税法に基づき6月に始まった新制度では、返礼品が「寄付額の3割以下の地場産品」に限定されることになった。

 同時に総務省は、通知で返礼品の見直し期限としていた昨年11月以降も豪華返礼品を贈って著しく多額の寄付を集めたとして、泉佐野市、静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町の4市町を制度の対象から除外。寄付しても税制優遇を受けられなくなった。

 これに対し、泉佐野市は返礼品規制の効力が発生するのは今年6月以降だと主張。これ以前の取り組みを判断材料とするのは「法の不遡及」の原則に反すると訴え、総務省の判断取り消しを求めていた。

 同委の勧告決定は市の主張に沿ったもので妥当だと言えよう。法の不遡及は法治国家の大原則であり、どのような理由があるにせよ、これに反することが許されないのは当然だ。

 泉佐野市は「本市の主張をおおむねご理解いただき感謝いたします」とのコメントを発表した。だが、同委が市に対して「制度の存続が危ぶまれる状況を招いた」と苦言を呈していることは重く受け止める必要がある。

 総務省によると、ふるさと納税の18年度の寄付総額は前年度比1・4倍の5127億600万円に達した。このうち泉佐野市は497億5300万円で、全体のほぼ1割。制度から除外された4市町を合わせると全体の2割超を占める。

 泉佐野市は返礼品に肉やビールなど各地の名産品約1000種類を用意した上、大手インターネット通販「アマゾン」のギフト券を上乗せするキャンペーンも行っていた。制度の趣旨に反していることは自明で、これでは節度を持って運営している自治体の理解は得られまい。

 もっとも制度の不備是正が遅きに失した面は否めず、この意味では国の側にも責任がある。国は自治体とも意見を交換し、より良い制度の構築に努める必要がある。

地域の魅力を発信したい

 ふるさと納税の返礼品は、地域の特色や魅力を発信していくためのものでもある。最近は商品ではなく、ものづくりや乗馬など「体験型」の返礼で寄付者に地域を訪れてもらう自治体もある。地道に税収を増やすとともに、寄付者とのつながりを地域活性化に生かしていくことが求められる。