羽田新ルート、住民の不安解消に努めよ


 羽田空港の発着枠増加に向け、東京都心上空を通過する新しい飛行ルートの運用が来年3月29日に始まる。

 ただ、地元住民は騒音や落下物などの発生を懸念している。国は住民の不安解消に努めるべきだ。

国際便の受け入れ強化

 従来は東京湾上空を飛行していたが、新ルートでは新宿や品川など都心上空も通過する。現在、羽田の1時間当たりの発着回数は82回が限界だが、新ルートの運用で最大90回となる。

 増える分は全て国際線に割り当てる計画だ。これによって、年間約6万回だった国際線の発着回数は約9・9万回に増えることになる。

 新ルート運用は、東京五輪・パラリンピックを前に国際便の受け入れ体制を強化し、政府が目標に掲げる2020年の訪日外国人旅行者4000万人の達成を目指すことが狙いだ。石井啓一国土交通相は「訪日外国人旅行者のさらなる受け入れのためには、羽田空港の機能強化が必要不可欠と考えている」と強調した。新ルートの運用開始によって観光立国に向け弾みをつけたい。

 このルートは、南風が吹く日の午後3~7時に運用される。時差の関係で夕方に国際線の出発を希望する航空会社に対応する狙いもある。

 ただ新ルートをめぐっては、地元住民が騒音や落下物などの発生に不安を抱いている。ルート下には高層ビルも林立しており、円滑な運用には住民の不安を払拭(ふっしょく)することが欠かせない。

 国交省は騒音対策のため、着陸機が降下する角度を従来案の3度から3・5度に引き上げる。角度を引き上げると降下時にエンジンの出力が下がり、騒音を軽減できるからだ。飛行高度も新宿駅前で当初の約910㍍から約1040㍍、大井町駅前(品川区)で約300㍍から約340㍍に上がる。

 それでも、国交省は高度が1000㍍以下になると「走行中の電車内の音」に相当する騒音が発生すると予測している。国交省はこれまでも住民説明会を繰り返してきたが、今後も引き続き理解を得られるように努める必要がある。

 大阪(伊丹)空港や福岡空港なども市街地に近接している。こうした空港の事例も参考に、落下物防止を含む対策を徹底してほしい。

 羽田の国際線受け入れ体制拡充が発表されたことで、都心に近い利便性から海外航空各社が成田空港の発着便を見直す可能性もある。すでに米デルタ航空が、アジアのハブ(拠点)と位置付けてきた成田から来年3月に撤退し、羽田に日米路線を集約することを決めるなどの動きが出ている。

競争力向上の取り組みを

 韓国・仁川や北京、シンガポール・チャンギなどアジア各国の国際空港との競争は一段と激化する見通しだ。

 競争力を向上させるには、羽田、成田両空港の役割分担をどのようにするかも課題となる。羽田はビジネス路線、成田は格安航空会社(LCC)を含むレジャーやリゾートの路線を中心とするなどの取り組みが求められる