米中摩擦、解消に向け中国は構造改革を
トランプ米大統領は、中国からの輸入品2500億㌦(約26兆円)分に昨年発動した制裁関税を10月1日付で25%から30%へ引き上げると発表した。9月1日に導入する対中制裁「第4弾」の税率も当初予定の10%から15%に引き上げる。中国が米国製品への関税拡大を発表したことに対抗した動きだ。
中国の報復に米国が対抗
中国は米国の第4弾への報復として、米国からの輸入品約750億㌦相当に、9月1日から最大10%の追加関税を課すことを明らかにしていた。冷凍食品や衣料品、木材や鋼板など幅広い製品を対象としたものだ。
一方、米国が10月1日付で引き上げる制裁関税の主な対象は半導体や産業用ロボット、化学品など、第4弾の対象は眼鏡や枕、スマートフォン、ノートパソコンなどとなる。米国は第4弾によって、中国からのほぼすべての輸入品に制裁関税を拡大することになる。
トランプ氏はこれまでも中国が報復措置を取れば「究極の対抗手段」で応じる構えを示していた。中国の対応を受け、トランプ氏は米国企業に中国事業の撤退を求めるとともに、米国への生産移転を検討するようツイッターで訴えた。
6月末に大阪で行われたトランプ氏と習近平国家主席との会談では協議再開が確認され、第4弾の発動は当面見送られることになったが、今月1日にトランプ氏は発動を表明。米中摩擦は激化する一方で、世界経済の減速が懸念される。
トランプ政権が中国による知的財産権侵害を理由とした制裁関税を発動し、中国の激しい報復を招いてから7月で1年が経過した。この間、両国による高関税の応酬が続いてきた。
トランプ政権の対中強硬策は関税以外にも広がる。安全保障上の懸念を理由にした①対米投資規制の強化②対中輸出管理の強化③米政府による中国製品の調達制限――が2018年に法制化された。中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)などハイテク企業を厳しく締め付けるものだ。
さらに、トランプ政権は中国が輸出競争力を高めるために人民元相場を安く誘導しているとして、制裁対象となる「為替操作国」に認定。米中摩擦は通貨政策にも及んだ形だ。
米中摩擦の解消には、中国の構造改革が欠かせない。中国の構造問題とは、知財権侵害のほか、自国企業に対する不当な補助金や外国企業への技術移転の強要などを指す。世界2位の経済大国が、こうした問題を放置することは許されない。
中国は巨額の補助金で軍事転用も可能な最先端技術を育成している。不公正な慣行が中国の国家資本主義を支えるだけでなく、軍事的脅威も高めていることは、到底看過できるものではない。各国には米中の貿易戦争長期化を想定した経済政策が求められる。
G7でも強く求めよ
中国の構造問題に関しては、米国だけでなく、日本や欧州の企業も苦しめられてきた。
フランスで行われる先進7カ国首脳会議(G7サミット)でも、中国に構造改革を強く求めていくべきだ。