コンビニ、負担軽減でインフラ維持を
セブン&アイ・ホールディングス(HD)は、傘下のコンビニエンスストア最大手セブン-イレブン・ジャパンの古屋一樹社長が8日付で退任し、後任として永松文彦副社長が昇格する人事を発表した。
24時間営業をめぐる加盟店とのトラブルで社内外の混乱を招いたことを受け、経営体制を刷新する。
曲がり角の24時間営業
セブン-イレブンは2月、人手不足を理由に許可なく深夜営業を中止した大阪府内の加盟店に、契約解除や多額の違約金請求を示唆したことが発覚。世論の集中砲火を浴びた。
年中無休で終日営業を続ける24時間営業は、セブン-イレブンが1975年に開始した。現在では大手チェーンの9割超の店舗が行っている。いつでも買い物ができる便利さが消費者に支持されてきたが、最近は深刻な人手不足で深夜帯の店員を確保できず、厳しい店舗運営を強いられている加盟店が目立つ。24時間営業は曲がり角を迎えていると言えよう。
セブン-イレブンは直営店と加盟店の一部で営業時間を短縮する実験を開始。永松氏は、原則24時間としている営業時間について、加盟店オーナーの希望や販売状況を考慮して「個別の店に合わせて柔軟に対応する」と述べている。
一方、経済産業省はコンビニ各社に対し、加盟店の人手不足や長時間労働を解消する行動計画の策定を要請。世耕弘成経産相は各社の計画を踏まえ、政府としても支援策を検討する考えを表明した。加盟店の負担軽減につなげる必要がある。
コンビニ各社と加盟店オーナーの契約は、主に民間企業と個人事業主の間で交わされる。政府が民間への「介入」とも言える異例の要請を行ったのは、コンビニに一定の公共性があるためだ。
コンビニは全国で約5万6000店に達し、公共料金や税金の支払い、宅急便の受け取り、災害時の帰宅支援や物資提供の拠点などとして機能している。社会インフラとしての役割を持つコンビニの存在は、国民の日常生活に不可欠なものとなっている。官民挙げてコンビニのネットワーク維持に努めなければならない。
コンビニ各社は、これまで激しい出店競争を展開してきた結果、地域によってはコンビニが密集し、既存店の年間来客数は減少傾向にある。収益に対するオーナーらの満足度も低い。こうした不満を解消することも求められる。
新たなモデル構築を
コンビニ各社は人手不足の深刻化を受け、省力化の取り組みを急いでいる。セブン-イレブンは昨年末、顔認証を使った無人決済の実験店を開設。ローソンは今年7月ごろから一部の店で夜間無人営業の実験を始める予定だ。
ファミリーマートとパナソニックも今月、顔認証で精算できる無人決済サービスや、店員の腕の電子端末に欠品を通知するシステムなど省力化につながる多彩な技術を導入した実験店を横浜市に開業した。こうした技術開発を進め、コンビニの新たなモデルを構築したい。