国内景気、力強さなく増税後が心配だ


 2018年10~12月期の国内総生産(GDP)は2四半期ぶりにプラスにはなったが、力強さは見られない。海外環境の悪さもあり、先行きには不透明感が増す。10月には消費税増税を実施する予定であり、19年度予算案で種々の対策を用意しているとはいえ、実施後の経済が心配になる。楽観は禁物である。

 米中貿易摩擦が長期化

 18年10~12月期は、昨年夏の自然災害で落ち込んだことの反動で、個人消費や設備投資が2四半期ぶりにプラスに転じ、成長を牽引した。実質GDPの増減にどれだけ影響したかを示す寄与度は個人消費0・3%、設備投資0・4%のそれぞれプラス。内需全体では0・6%のプラスである。

 外需の寄与度は0・3%のマイナスで、数字上、成長を押し下げる形になったが、これは輸出の伸び以上に輸入が増加したためで、内容的には決して悪いことではない。

 問題なのは、内需の回復に依然として力強さが見られず、外需では輸出が振るわないことである。加えて、最も懸念されるのが、日本経済を取り巻く外部環境の悪さである。

 個人消費拡大のカギを握る19年春闘が2月に入り本格的にスタートしたが、賃上げの必要性では労使とも認識は一致しているものの、その幅や中身では隔たりも小さくない。

 その賃上げで重しとして大きくのしかかっているのが、中国経済など海外経済の減速傾向であり、その主因になっている世界1、2位の経済大国、米中の貿易摩擦の長期化である。19年3月期決算で収益悪化を予想する企業が増えている状況は、賃上げが以前にも増して厳しい状況になることを予想させる。

 茂木敏充経済財政担当相は会見で「景気は緩やかに回復している」との認識を示した上で「中国経済の先行きなど海外経済の不確実性に留意する必要がある」と述べたが、景気は既にピークアウトし、19年1~3月期はマイナスになってもおかしくない、と指摘する識者もいる。景気拡大の1月の戦後最長更新も微妙というわけである。

 今後の動向は、やはり世界経済の状況次第という性格が強いだろう。注目の米中貿易協議が閣僚級で3月1日の交渉期限までの合意を目指し進められている。最新の報道では、協議進展を条件に米側が期限の60日延長に応じる可能性も伝えられる。一日も早い決着を望みたい。

 先行きが不透明なのは、米中貿易問題だけでない。英国の欧州連合(EU)離脱に伴う混乱もある。また拡大を続けてきた米国経済も、米連邦準備制度理事会(FRB)が今後の利上げについて慎重姿勢に変わるなど変調の兆しを見せている。

 景気動向に柔軟な対処を

 安倍政権としては海外環境に大きく左右されない内需主導の景気拡大を目指し、経済の好循環実現に取り組んでいるが、ままならない状況である。

 このところ、食料品の値上げが相次ぐ。10月には消費税増税が控える。予算措置や税制などで景気腰折れ対策を施すが、景気の現状からは不安も残る。対策に慢心せず、柔軟な対処を心掛けたい。