12月日銀短観、景気の先行きに懸念強まる


 12月の日銀短観(全国企業短期経済観測調査)は、深刻化する米中貿易摩擦への懸念を背景に、企業経営者が景気の先行きに慎重な見方を強めていることを示した。

 英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる混乱など、日本経済を取り巻く懸念要因は山積する。景気拡大は戦後2番目の長さに達したが、来年には後退局面に入る恐れが強くなってきた。

米中対立の長期化必至

 今回の短観が示す企業景況感の現状は、大企業製造業で9月調査比横ばいとなり、3月調査から3四半期続いた悪化に歯止めがかかった。大企業非製造業の方は、自然災害や天候不順の影響が和らいだことなどから、2期ぶりに若干改善した。

 12月の日銀短観は、回答期間が11月13日から12月13日までで、これだけを見れば足元の景気は確かに良さそうである。

 だが、問題はやはり米中貿易摩擦の影響である。3カ月後の先行きに対して、企業の規模、業種を問わず軒並み、業況判断指数(DI=「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値)が4ポイントから6ポイント悪化。企業経営者が景気の先行きについて、強い懸念を抱いていることを示した。

 米中貿易摩擦は、中国が新年から3カ月の間、米国車への報復関税を停止する措置を発表するなど一部緩和の動きも見られるが、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)副会長の逮捕を契機に、米中両国の対立は貿易摩擦の域を超えて覇権争いの様相となっており、対立の長期化が必至の情勢にある。

 懸念材料は他にもある。貿易摩擦激化の影響もあって中国経済が減速傾向を強めていることや、英国のEU離脱をめぐる混乱、年明けから始まる新たな日米貿易交渉で厳しい展開も予想されることなどだ。日本経済を取り巻く環境は懸念要因が山積していると言え、先行き不透明感からリスクを見極めたいとする企業経営者は少なくない。

 今回の短観で、今年度の設備投資計画が大企業全産業で前年度比14・3%増と小幅だが上方修正され、依然として高い水準にあることは朗報である。

 ただ前述のように、世界経済の先行き懸念が長引けば、企業の投資意欲に水を差す恐れは十分に考えられる。今回の調査で、半導体製造装置など機械部門で業況判断が悪化したことを、来年度の設備投資を手控える兆しと見る向きもあり、予断を許さない。

 日本経済は、景気拡大の期間が2017年9月時点で高度経済成長期の「いざなぎ景気」を抜き戦後2番目の長さに達し、19年1月まで続けば戦後最長になる。もっとも、力強さは「いざなぎ」が年度平均で約10%の成長率だったのに比べれば、現在は1%強と実感に乏しく心許ない状況である。

来年度予算編成が重要

 18年7~9月期の実質成長率が年率2・5%減に下方修正され、かつ先行き不安材料が多い状況に、来年は景気後退局面入りも予想される。

 10月には消費税増税も予定されるだけに、その対策を含む来年度予算の編成はとりわけ重要である。