日米新貿易協議、米国は摩擦を激化させるな


 日米の閣僚級による新たな貿易協議(FFR)の初会合が米ワシントンで行われた。

 米国は自由貿易協定(FTA)を念頭に2国間交渉開始を要求したが、日本は多国間の枠組みを重視する立場を改めて強調。両者の溝は埋まらなかった。

赤字の削減を目指す

 FFRは、茂木敏充経済再生担当相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が貿易や投資の在り方を話し合う協議だ。会合では、物品関税や投資ルール、他国の不公正貿易への対応など幅広い問題を扱った。

 トランプ米政権は約7兆円に及ぶ対日貿易赤字を問題視し、この削減を目指している。米国が検討する自動車・同部品への追加関税について、日本は自国製品に対する発動回避への言質を明確に得られなかった。

 米国が、自動車を日本に対する有力な「交渉カード」と見なしていることがうかがえる。11月の中間選挙を控え、トランプ政権は自国優先の貿易姿勢を強めているが、貿易摩擦の激化は避けなければならない。

 追加関税が発動されれば、対米輸出の3割を自動車が占める日本への打撃は大きい。トヨタ自動車は1台当たり6000ドル(約66万円)のコスト増になると試算している。昨年約70万台を日本から米国に輸出しており、年間約4600億円の負担増になる計算だ。

 一方、米国が主張するFTA交渉について茂木氏は「交渉はかなりの時間がかかる。環太平洋連携協定(TPP)復帰が日米両国にとって最善だ」と強調。これに対し、ライトハイザー氏は「トランプ大統領は2国間交渉を重視している」と改めて主張した。

 FTA交渉は難航が見込まれる。それよりも、農業分野の関税撤廃・引き下げなどで合意したTPPに復帰する方が米国にとってもメリットは大きいはずだ。TPPは知的財産権保護など透明性の高いルールを定めており、影響力を拡大する中国を牽制(けんせい)する狙いもある。

 米国を除く11カ国でのTPPは、早ければ年内にも発効する可能性がある。日本が米国との2国間協議を行い、11カ国の結束を乱すことがあってはなるまい。日本は米国にTPP復帰を要求し続ける必要がある。

 トランプ政権は7月、中国から輸入するハイテク製品に25%の追加関税を課す制裁措置を発動した。対象は340億ドル相当の輸入品で、今月23日にはやはり中国からの輸入品160億ドル相当に25%の関税を上乗せする制裁第2弾を発動する。7月の追加関税に対しては、中国も同規模の米国製品に報復関税を実施するなど「貿易戦争」がエスカレートしている。

 米国の保護主義的政策は世界経済に悪影響を与えかねない。日本は自由貿易を通じて世界経済の成長を主導するよう米国に促す必要がある。

知財侵害問題で協力を

 もっとも、対中制裁関税は知財侵害を理由に発動されたものだ。FFRでは、中国を念頭に知財侵害問題で連携する方針で一致した。米国は保護主義に走るのではなく、自由で公正な貿易ルールを広めるために日本との協力を強めるべきだ。