内需主導で2期ぶりのプラス成長にも楽観論を戒めた読売、日経社説

◆猛暑による影響懸念

 内閣府が発表した4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質で前期比0・5%増、年率換算では1・9%増と、2四半期ぶりのプラス成長になった。個人消費と設備投資が牽引(けんいん)した内需主導の成長パターンである。

 今回発表のGDPについて、これまでに社説で論評を掲載した新聞は11日付の読売、日経と、休刊日明け14日付本紙の3紙。保守系紙ばかりの論評となったが、いずれも楽観論は見られず、先行きを懸念する内容になった。

 「日本の経済成長はプラスに転じたが、先行きは楽観できない。さらなる賃上げや設備投資の継続によって、需要を拡大することが重要だ」――読売社説の冒頭である。全体の結論であり、見出しも「景気回復の持続力を高めたい」である。

 同紙は、4~6期の成長の原動力は国内需要の持ち直しで、個人消費と設備投資という内需の2本柱が好調だったことは「心強い」と評価し、「ひとまず景気は底堅さは確認できた」とした。

 それでも、「先行きは楽観できない」というのは、7月以降の猛暑の影響である。

 野菜価格の高騰や外出の手控えなどが消費を押し下げる要因になるとの指摘や、日銀の最新調査による物価の実感を聞いた「体感物価」の上昇率が平均4・6%と実際の上昇率を大きく上回っていることなどから、「食品など身近な商品の値上がりが、消費者心理を冷やし、財布のひもを固くさせる恐れがある」からである。

 個人消費が0・7%増と2四半期ぶりに前期を上回ったのは、雇用者報酬がボーナスの増加で大きく伸びたこともあるが、1~3月期に低迷した反動が出たという側面が少なくない。

◆最大リスクは米政権

 同紙は指摘しなかったが、「強さは一時的と言わざるを得ず」(本紙)、だからこそ、見出しの「景気回復の持続力を…」となったのであろう。この点では、読売が指摘するような「景気の底堅さが確認できた」と本当に言えるのかどうか疑問が残る。

 日経の見出しは「内需主導の持続的な成長を固めたい」と読売の見出しとほぼ同意だが、文中では「景気が緩やかな回復軌道に復帰したことを裏付けた」にとどめており、妥当なところであろう。

 先行きへの懸念については、各紙共通で、日経も「油断は禁物」とした。

 同紙が真っ先に挙げたのは、やはり米トランプ政権の動向で、同政権が仕掛ける「貿易戦争」の行方が見通せないとし、中国など新興国市場では景気に不透明感が増しているとした。それだけに、「賃金上昇の流れを個人消費の活性化につなげ、海外需要に過度に依存しない、内需中心の持続成長の道筋を固めておきたい」というわけである。

 日経が指摘する「賃金上昇の流れ」とは、4~6月期の雇用者報酬が前年同期比4・3%増と24年ぶりの上昇率になったことを指すようで、「賃上げの裾野の広がりが消費に結びつく好循環が始動したのか、が注目点だ」と期待のこもった指摘をしたが、どうか。

 同紙などが「当面の最大のリスク」としたトランプ政権に話を戻すと、読売が指摘した米中間の貿易摩擦激化もそうだが、11月に中間選挙を控え自動車の輸入関税の引き上げを持ち出してきたら、日経や本紙が言うように、日本経済も無傷ではいられない。

◆好循環始動に疑問符

 日経はさらに、国内でも2019年10月に予定する消費税率の引き上げと、20年夏に開催する東京五輪・パラリンピック後の関連投資の反動減という「景気の難所が控えている」との懸念があることを挙げている。

 確かにその通りで、それらを勘案すると、同紙が先に注目点とした「賃金上昇の流れ」よる好循環の始動には、かなり疑問符が付きそうである。

 だからこそ、日経社説の最後は、「好業績で余力のある企業は賃金や配当を通じて家計に積極的に還元する。政府は労働市場改革など内需を刺激し、潜在成長力を高める対策を推進し、外需の変調に備える必要がある」である。

 読売もほぼ同意だが、景気に絡む社説の最後は毎回ほぼ同じ内容である。それだけ、日本経済は課題が解決されずにきているということか。

(床井明男)