米国防権限法、地域安定へプレゼンス強化を


 米国の2019会計年度(18年10月~19年9月)の国防予算の大枠を定める総額約7160億ドル(約80兆円)の国防権限法が成立した。

 中国通信大手の利用禁止や多国間演習からの中国締め出しなどを盛り込み、中国への強硬姿勢を鮮明にした。

中国に厳しい姿勢示す

 国防予算はこの9年間で最大規模。「米軍の再建」を掲げるトランプ米大統領の意向を踏まえたものとなった。

 米軍は今回の予算で77機のステルス戦闘機F35など最新鋭の戦闘機や軍艦を導入して兵力を増強する。トランプ氏は核戦力の近代化やミサイル防衛(MD)の強化を図ると述べて「米国は平和国家だが、戦いを余儀なくされれば必ず勝つ」と断言した。オバマ前政権下の国防費削減で規模が縮小した米軍の立て直しを急ぐ必要がある。

 米国はこの国防権限法で中国に厳しい姿勢を示した。すべての米政府機関とその取引企業に対し、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(〈つうじん〉ZTE)など中国政府と関係のある企業の商品を使うことを禁止。安全保障に関するハイテク技術を中国などから保護するため、海外企業による対米投資を安全保障の観点から審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の権限を強化する規定が盛り込まれた。

 米国ではこれまでも、ZTEとファーウェイの製品について「情報を不正に改竄(かいざん)したり盗んだりする機能」や「ひそかにスパイ活動を実施する機能」の存在が指摘され、使用が問題視されていた。情報漏洩(ろうえい)を防止するため、厳しい措置を講じるのは当然だ。

 さらに、世界最大規模の多国間軍事演習である「環太平洋合同演習(リムパック)」については、中国が南シナ海の軍事拠点化を止(や)めない限り、参加を禁じるほか、南シナ海で中国による新たな活動があった場合に国防総省が直ちに公表することを求めた。

 一方、台湾については武器売却を推進する方針が明記されたほか、台湾との軍事演習の拡大や病院船の台湾への寄港を検討することを求める条項が盛り込まれた。3月に成立した台湾旅行法に基づき、米・台湾防衛当局者の相互訪問も明記した。

 中国の習近平国家主席は中台統一に強い意欲を示している。米国は台湾との軍事協力を強化し、地域の安定につなげる必要がある。

 トランプ政権は17年12月に中国を「競争勢力」と規定する国家安全保障戦略を策定して「米国の持つ政治的、経済的、軍事的な力を結集させなければならない」と強調。今年1月に発表した国家防衛戦略では、中国について「近いうちにインド太平洋地域で覇権を築くことを目指している」と警鐘を鳴らしている。中国に対抗するため、この地域における米軍のプレゼンス強化が求められる。

日本は相互運用性向上を

 沖縄県・尖閣諸島問題などで中国の脅威に直面する日本は、米国との同盟を強化し、自衛隊と米軍との相互運用性を一層高めていくことで中国を牽制(けんせい)すべきだ。