サウジ国王来日、「脱石油」改革への協力を


 サウジアラビアのサルマン国王が来日した。サウジ国王の来日は46年ぶり。その目的は、石油に依存する経済からの脱却への道筋を付けることだ。

原油価格低迷に危機感

 かつて原油産出量世界一だったサウジだが、現在は米国に取って代わられた。米国でシェールガス、シェールオイルの採掘技術が確立され、商業ベースでの量産が可能になったためだ。

 原油価格は2014年の1バレル=100㌦前後から、一時はその4分の1ほどにまで下落、現在は50㌦ほどで推移している。歳入の8割を原油に頼るサウジは、価格低迷に強い危機感を抱いている。将来的な埋蔵原油の枯渇などに備え、30年ほど前から「脱石油」を模索してきたが、思うような成果は出ていない。

 国王の息子、ムハンマド副皇太子が、石油以外による歳入増を目指す「ビジョン2030」を策定し、「脱石油」経済改革に積極的に取り組んでいる。安倍晋三首相はサルマン国王との会談で改革への協力を表明し、「日・サウジ・ビジョン2030」を公表。産業競争力強化やインフラ整備などの分野を中心に日本が官民を挙げて協力していくことで合意した。両国関係を「戦略的パートナー」と規定し、防衛交流など政治分野の連携強化も打ち出している。

 サウジはサウド王家が支配する君主国家だ。潤沢なオイルマネーを基に、教育、医療費は無料、税金もないなど、国民の生活が守られる一方、王家の安定した支配が維持されてきた。

 だが原油価格低迷による歳入減で、これまでのような「ばらまき経済」の維持が困難になっている。すでに付加価値税の導入が決まったほか、国債を発行し、国営石油会社サウジアラムコの株式の売却も検討されている。今回の訪日では、アラムコの上場をめぐって東証と協力していく方針も明らかにされた。

 一方、サウジはメッカ、メディナというイスラム教の二大聖地を擁する世界のイスラム教徒の中心でもある。中東の大国として地域の安定にも大きな影響力を持ち、同国の経済的、社会的な不安定化は、中東の混乱にもつながりかねない。

 サウジは現在、ペルシャ湾の対岸にあるイランと対立関係にある。スンニ派のサウジに対し、イランはシーア派の大国であり、対立は根深い。サウジは親米国だが、イランは反米という両極にある。

 ところが、オバマ前米政権がイランと核合意を交わしたことで、米国とサウジの関係は悪化した。トランプ米政権との関係改善を模索しているところだ。脱石油を主導するムハンマド副皇太子はトランプ大統領と会談。政治、軍事、経済などで「米サウジ戦略的パートナーシップ」を強化、深化させることで一致した。

日本は中東安定に貢献を

 サウジはシリア内戦で有志連合に参加し、イランの支援を受けるイエメンの新政府組織「フーシ派」への空爆を実施するなど、地域の安全保障問題にも積極的に関与してきた。

 日本の輸入石油の3分の1はサウジからだ。サウジ経済改革への協力で、日本は中東の安定に貢献すべきだ。