高齢者ドライバー、能力過信せず重大事故防げ


 改正道路交通法が12日施行され、75歳以上のドライバーを対象に認知症対策が強化されることになった。高齢者ドライバーによる事故が増加していることへの対策だが、事故を減らすため、あらゆる面から対策を強化する必要がある。

強化された認知症対策

 今回の改正で75歳以上のドライバーは、3年に1度の免許更新時に「認知症の恐れ」と判定されれば、医療機関の受診が義務付けられ、認知症と分かれば免許証の取り消し・停止となる。これまでは認知症の恐れと判断されても一定の違反がなければ、医師の診断を受ける必要はなかった。また75歳以上のドライバーは、免許更新時に加え、信号無視や逆走など指定された18の交通違反を一つでもすると、認知症機能検査を義務付けられる。

 2016年に認知症が原因で免許取り消し・停止となった人は1844人だったが、改正後は年間約5万人が検査などを通じて受診が必要になり、3割は認知症と診断され免許取り消し・停止となると警察庁は見込んでいる。推計では8・1倍の約1万5000人に上るとみられる。

 高齢者ドライバーによる事故は、高齢化による高齢者ドライバーの増加が背景にある。65歳以上のドライバーは、15年12月の時点で1710万人、全体の約21%に上っている。

 登校途中の小学生の列に車が突っ込んで、多数の死傷者を出すなど、ここ数年、高齢者による重大事故が相次いで発生している。高速道路を逆走したり、アクセルとブレーキを踏み間違えたりといったものが少なくない。中でも75歳以上の高齢者が起こした死亡事故は、15年は全体の1割以上を占めた。

 高齢者ドライバーによる事故を減らすため、運転に不安を持つ高齢者のための免許自主返納制度がある。返納すれば運転経歴証明書が発行され、自治体などによってはタクシーやバス、買い物などの割引サービスが受けられる。高齢者事故の増加などを背景に、自主返納の数は増えているが、65歳以上の免許保有者の2%ほどにとどまっている。車が生活の足であり、車なしの生活は考えられない人が多いのである。

 こういう高齢者ドライバーの増加を見込んで、自動車メーカーでは、自動ブレーキなど自動車に安全運転機能を取り付ける動きが広がっている。国土交通省や経済産業省も、自動ブレーキなどを備えた車を「安全運転サポート車」と呼び、普及に協力する。20年にはほぼ100%になる見通しという。

 コスト面での利用者の負担は増えるが、高齢者ドライバーの増加の趨勢(すうせい)を考えれば、歓迎すべき動きである。しかし、自動ブレーキへの過信は禁物だ。

周囲のサポートも重要

 認知症と判断されなくとも、高齢になれば認知機能や運動機能は低下する。そういう年齢に達していることを自覚し、自分の運転能力を過信せず、常に、自らをチェックする姿勢が必要だ。また機能低下は本人には認識されにくい面もある。家族など周囲の人が注意しチェックするなどサポートすることも重要だ。