宅配見直し、求められる利用者の協力


 宅配最大手のヤマト運輸が、インターネット通販の拡大と人手不足を背景に、宅配サービスの抜本的な見直しに着手する。

荷受量抑制の検討始める

 ヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングスは2017年3月期、国内取扱量が前期比8・0%増の18億7000万個に上るものの、本業のもうけを示す営業利益は15・4%減の580億円とリーマン・ショック以来の低水準に沈む。自社で賄い切れない荷物の配送を外部に委託するため、荷物が増えるほど収益が圧迫される状況に陥っている。

 ネット通販の普及で、業界全体の取扱個数は40億個に迫る。ドライバーの人手不足が深刻化し、長時間労働も常態化している。こうした中、ヤマトは労働組合の「労働環境が厳しく、サービスの品質を保てない」との声を受け、荷受量抑制の検討に入った。

 このため、割引を適用していたネット通販会社に値上げを要求する方向だ。従業員の労働環境改善を目指し、17年度の残業時間を16年度比1割減らす方針も固めた。

 ライバルの佐川急便は荷受量を抑制する一方、1個当たりの単価アップに取り組んでいる。また短時間勤務も認めたほか、台車で配達する都市部では運転免許を持たない人の雇用も始めるなど、多様な人材の確保に努めている。今回の見直しは顧客満足を重視してきたヤマトの大きな戦略転換と言えるが、一定のサービス水準を維持するためにはやむを得ない判断だ。

 ドライバーの負担を大きくしている原因の一つとして、再配達の個数が業界全体の約2割を占めるまでに増えたことが挙げられる。このため、ヤマトは時間帯指定の一部廃止や現在は無料の再配達の見直しなども検討する。海外では時間帯指定のサービスがなかったり、再配達は有料だったりする。

 再配達が増える背景には、共働きや一人暮らしの世帯が増えていることがある。ただ看過できないのは、利用者が時間帯指定をしたにもかかわらず、ドライバーが配達に行くと不在だったというケースだ。

 「不在にしても、再配達してもらえばいい」という安易な考えがうかがえる。しかし時間帯指定をしたのであれば、やむを得ない事情がない限り、自宅で荷物の到着を待つべきではないか。いくら利用者でも、ドライバーに過重な負担を掛けることがあってはなるまい。

 もちろんサービスを見直す以上、ヤマトの側にも利便性を損なわないための努力が求められる。ヤマトは、仕事帰りなどに荷物を受け取れる宅配ロッカーを22年までに駅や商業施設など全国の5000カ所に設置する計画だ。設備投資の負担を減らすため、ロッカーはほかの宅配会社にも共同利用を呼び掛けるという。今後もドライバーの負担軽減と生産性向上の両立に知恵を絞ってもらいたい。

欠かせない重要インフラ

 物流は社会に欠かすことのできない重要インフラだ。維持するには、利用者の協力や意識転換も欠かせない。今後は再配達の有料化など一定の負担に応じることが求められよう。